トップ > 北陸中日新聞から > 北陸文化 > 記事一覧 > 11月の記事一覧 > 記事

ここから本文

北陸文化

【雨乃日珈琲店だより ソウル・弘大の街角から】(11) 海外雑誌の取材

「天游」(2010年)。人間がもともと備えている心のゆとり

写真

おおらかなタイ時間

 数年前からタイ人観光客が韓国に押し寄せている。当店にもタイ人のお客さんが時々やってくるが(どうやって当店を知るのかは謎)、このたびタイのコーヒー専門誌から取材を受けることになった。

 英語で書かれたメールをもらった時は素直にうれしかったが、しかし私は英語での会話が得意ではない。日本語か韓国語しかできないと伝えると、すぐに「心配するな」と返事が返ってきた。通訳が同行するのだろう、そう考え取材を受けることにし、オープン一時間前に当店に来てもらうことにした。

 しかし約束の時間になってもタイ人は来ない。少々の遅刻は想定内だったが、しかしそろそろオープン時間だ。今日の取材はなくなったのだろうと溜息(ためいき)をついた五十五分後、若い男女のタイ人ふたりが「ソーリー」と言いながらばたばたと入ってきた。これが噂(うわさ)のタイ時間かと思わず苦笑。

取材陣は他にも韓国の大型コーヒーイベント「ソウルカフェショー」を取材に来たとか。最近のタイにはカフェがとても多いそう=ソウル市の雨乃日珈琲店で

写真

 まずは急いで写真を撮ってもらうが、幸いというか何というか、撮影は非常にラフなスタイルで(コーヒーを淹(い)れるところを撮りたいとカメラマンが言うので、私が淹れはじめたら、最初の数秒だけサッと撮ってトイレに行ってしまうなど)、素早く終えることができた。しかし懸念のインタビューは通訳もなくやはり英語で(何が「心配するな」なのか)、満足に意思疎通できずこちらも素早く終了。

 ところで遅れてきたからにはハードスケジュールなのかと思いきや、取材が終わっても意外とゆっくり店内で休んでいるし、店を出た後もお互いの写真を撮りあっているし、結構のほほんとした人たちであった。どんな雑誌なのかと聞いたら「ホテルに忘れたから明日持ってくる」と言うし。

 これが同じ文化のもとで暮らしている人だったら文句のひとつも言いたくなるところだが、遠方から訪れた彼らの、おおらかな振る舞いと屈託のない笑顔には、日々の生活に緊張していた心がふっと軽くなる気がした。久しぶりにタイの空気を吸いに行きたいと思った。(文・清水博之、書・池多亜沙子/しみず・ひろゆき=ライター、いけだ・あさこ=書家、金沢市出身)

 

この記事を印刷する

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山
地方選挙

Search | 検索