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北陸文化

【美術】帰る「家」はどこですか 金沢21美企画展「変容する家」

【左】鉢の釉薬にひびが入る時の貫入音に耳を澄ませる宮永愛子さん(左)の作品「そらみみみそら(弁柄格子)」=金沢市野町で【右】鏡が張り巡らされた小部屋の空間に入ることもできる宋冬(ソン・ドン)さんの作品=金沢市野町の少林寺で

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 日中韓三カ国の現代美術作家二十二組が金沢市内の「広坂」「石引」「寺町・野町・泉」の三エリアで「家」をテーマにした作品を制作、展示する「変容する家」が開かれている。空きビルや寺院、緑地などの空間を使い、作家それぞれが金沢で調査を重ねたり、市民と交流したりする中から感じ取った家や家族についての思いを作品化。時代や社会の変化とともに形を変えていく「家」や「家族」の在り方を考えさせられ、作家や国柄で異なる家族観が感じられて興味は尽きない。 (松岡等)

金沢市内3エリア 日中韓から出品

 時の移ろいを表現する作家・宮永愛子は、弁柄格子の古民家で「そらみみみそら」を展示した。吹き抜けの中階に渡したガラスの上に並べた陶器の鉢。静かに耳を澄ますと、釉薬(ゆうやく)にひびが入る時に起きるかすかな貫入音を聴くことができる。ほかにナフタリンでかたどった柱時計を透明の樹脂の箱に閉じ込めた作品も。家は「変容しながら有り続ける」という宮永の表現は繊細だ。

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 韓国のハン・ソクヒョンは、廃棄物を素材に「Super − Natural : One day landscape in Kanazawa」を制作。材料となったのは、金沢市内で排出される一日平均で計十六トンという空きビン、空き缶、ペットボトル。金沢の風景を出現させることで現代消費社会を問う。ソクヒョンは「家とは地球のこと」と言い切る。

【上】緑地にリサイクルゴミで作り上げた作品「Super−Natural:OnedaylandscapeinKanazawa」について語るハン・ソクヒョンさん=金沢市増泉で【下】朗読と食事のパフォーマンスをする「風景と食設計室ホー」(右の2人、撮影・竹田泰子)=金沢市飛梅町の金沢くらしの博物館で

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 二〇〇六年の韓国・光州ビエンナーレで金賞を受賞した中国の宋冬(ソン・ドン)は、臨済宗の寺院・少林寺を舞台に「出家/在家」と題してさまざまな作品を配置したインスタレーションを展開する。「家は人間と切っても切り離せない。ひとは家を離れて外へ出て、また帰ってくる、組織の中で最小単位のもの」という。地域に根差した寺の空間で現代社会の中で家と個人の関係を考えさせる。

 村上慧は、自身一人が横になれるだけの大きさの発泡スチロールでできた家をかついで、空き地や駐車場などを「引っ越し」して渡り歩く。釜山から大阪、金沢へと歩いた記録をビデオや地図で作品に。妹の死から塩を素材にした制作を続ける金沢市在住の山本基が会場にしたのは、がん患者や家族の交流施設だ。一昨年、乳がんで亡くした妻との思い出であるサラサモクレンを床に描いた。

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 土地に根差した食をテーマにした展示やパフォーマンスを行う女性二人のユニット「風景と食設計室 ホー」(永森志希乃=富山県射水市、高岡友美)は金沢くらしの博物館を会場に、「明日の食卓」のタイトルで朗読と食事の公演を期間中計十回にわたり繰り広げる。朗読するテキストは会場となった同市石引地域に長く暮らした人々からの聞き取りから作成。食卓を囲む参加者は、暮らしの中で積み重ねられる日常の貴重さをあらためて感じさせられる。在日コリアンの呉夏枝(オハヂ)はワークショップで交流した住民と自らのルーツを布による作品に重ねている。

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 ほかに、金沢市出身で昨年の奥能登国際芸術祭にも参加したさわひらき、同市在住の伊能一三、日本を代表する川俣正、韓国のムン・キョンウォン&チョン・ジュンホら、参加する三カ国の現代美術作家それぞれの個性を街歩きを楽しみながら知る機会にもなっている。

 展示は十一月四日まで。観覧無料。 (敬称略)

 

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