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北陸文化

集大成「もう一段先へ」 来年10月ローマで個展

イタリアでの個展について語る吉田隆さん=石川県七尾市の自宅アトリエで

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彫刻家吉田隆さん(石川県七尾市在住)

 石川県七尾市在住で国際的に活躍する彫刻家・吉田隆さん(65)が来年十月にローマで開く個展へ向けた準備を進めている。会場は、かつて吉田さんが師事した現代のイタリア具象彫刻を代表する彫刻家の一人ベナンツォ・クロチェッティの名を冠した美術館。「先生が何というか」と笑うが、彫刻を志し四十数年の集大成とも言える展示になる。 (松岡等)

 吉田さんは一九七六年金沢美術工芸大彫刻研究科を卒業後、ローマ国立アカデミアへ留学。クロチェッティ教室に飛び込み、四年間学んだ。

 クロチェッティさんは一九一三年生まれで、美術品修復見習いをしながら彫刻に目覚め、三四年に二十代の若さでベネチア・ビエンナーレのイタリア彫刻大賞を受賞。戦後、バチカンの聖ピエトロ寺院の青銅扉を制作するほか、エルミタージュ美術館に作品を寄贈する巨匠。自然の中にある形を借りながら、表面的な再現を超えた普遍へ至る師の作品に学ぶことは少なくなかった。

 「イタリアでは量感のとらえ方の違いを痛感させられた。平面を組み立てて表現しようとする日本人の見方とは決定的に違っていた」と吉田さん。モデルを使い基礎のデッサンから行うオーソドックスな指導で「学生に『君には才能はない。他に仕事を探したほうがいい』といったことをずばずばと言う人だった。だから彼の教室は人気がなかったなあ」と懐かしむ。

 吉田さんは八〇年にクロチェッティ教室を卒業。その頃、金沢市内の画廊で作品が展示された。洋画家・鴨居玲さんが吉田さんの作品に「これは誰だ。おれが買う」と評価したという逸話がある。もう一人を加えて三人展を開くことが決まっていたが、開催の直前に鴨居さんは急逝。「直接、会うことはなかったが、作品を見てもらえたのはうれしかった」と、自信を深めた。

「星の音」(1993年)、高さ4メートル、幅3.1メートル、奥行き2.1メートル

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 帰国後、国内で数々の彫刻展で受賞を重ね、九三年にフジサンケイビエンナーレ現代彫刻展に出品した「星の音」が美ケ原高原美術館賞を受賞。長いキャリアの中では、ブロンズや石、アルミ、ステンレス、鉄とさまざまな素材を試みた。天体や宇宙をテーマにした抽象的な作品も多く、地元の七尾市や金沢市内などのほかパブリックアートとして各地に作品が展示されている。

「星を見る人」(1997年)、高さ1.7メートル、幅0.5メートル、奥行き0.3メートル

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 根本にあるのは具象から出発した何もない空間に存在するとは何かという哲学的な問題。「神が作った自然の形はしっかりしている。そこからは抜けられない」。ステンレスを組み合わせた人物像「星を見る人」(中日新聞北陸本社に展示)にも吉田さんが突き詰めた表現の在り方が現れている。

 ローマでの個展には初期の具象作品から近作まで四十点ほどを出品する。「展示する場所の近くに彼のアトリエを再現した場所があってね。先生はもしかすると『お前はまだ何も分かっとらん』なんて言うかもしれないな」と笑う。一方で「せっかくここまで続けてこられているので、もう一段先へ行けたらいいなとは思ってる」と、さらなる創作への意欲も語る。

「クロニクル」(2018年)、高さ66センチ、幅38センチ

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21日から金沢 近作など展示

 吉田さんは二十一日から金沢市本町のギャラリー「玄羅アート」で個展を予定(十月八日まで)。近作の小品「クロニクル」など十数点を展示する。北陸中日新聞、石川テレビ放送後援。

 

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