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北陸文化

【能楽おもしろ鑑賞法】22  能「六浦」 潔さを渋く表現

能「六浦」の前シテ。赤を排した装束で、紅葉することを止めたカエデの精を演じる=2007年11月4日、石川県立能楽堂で

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 人間の執着心や苦悩を鋭く描いた作品が多い能。一方で、心の叫びを主題としない淡々とした作品もある。そんな能「六浦(むつら)」が金沢能楽会の十月定例能で上演される。見どころはどこに…。

 舞台は六浦荘(横浜市。現地名は「むつうら」)の名刹(めいさつ)・称名寺。旅僧(ワキ)が、全山紅葉の中、一本だけ緑のままのカエデを庭園に見つけ、興味を持つ。

 里の女(前シテ)に聞くと、藤原定家の孫、中納言為相(ためすけ)が寺を訪れた際、この木だけ早くも紅葉しており、美しさを歌に詠んでくれた。栄誉に思ったカエデは以来、紅葉しなくなったという。女はこの木の精と明かし、僧に夜の法要を勧める。僧の夢に現れたカエデの精(後シテ)は御法を喜び、月の光に舞い遊ぶ。

 ヤマ場は特にない。面は中年女性の曲見(くしゃみ)、装束も赤色が入らず、上品だが華やかさはない。眠くなるかも。

 これが能「紅葉狩」になると、赤を基調にした装束の若い女たちが登場し、紅葉の下で酒宴を開く。通りかかった平維茂(これもち)を誘い、つやっぽく舞って酔いつぶす。すると女たちは鬼となり、維茂を殺そうとするから物騒な話だ。

 片や六浦は穏やかだ。有名人の歌に詠まれたといって一生紅葉しないとは恐るべき頑固さだが、それ故の平安か。戦乱に挟まれた能の成立期。作者が渋く表現した、他人に染まない潔さを、味わい尽くしたい。 (笛)

◇十月定例能番組(10月7日午後1時、石川県立能楽堂)

▽能「六浦」(シテ福岡聡子)

▽狂言「狐塚」(シテ鍋島憲)

▽仕舞「敦盛クセ」(シテ松田若子)

▽能「天鼓」(シテ島村明宏)

▽入場料=一般2500円(当日3000円)若者割(三十歳未満、当日券のみ)1000円、中学生以下無料、(問)同能楽堂=電076(264)2598

 ※能楽堂の駐車場は工事中。石引駐車場を使えば駐車券がもらえる。

 

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