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北陸文化

【美術】東アジア文化都市2018金沢 街中インスタレーション 空きビル占拠!?

屋上で作品を語る川俣正さん

写真

 金沢21世紀美術館が金沢市内のまちなかを舞台に九月十五日から開催する企画展「変容する家」に、日本を代表する現代美術家の川俣正さん(65)が参加している。既に空きビルを“占拠”して、市内中心部に出現した廃材を使ったインスタレーション作品を出現させた。金沢の街にどんな異化効果をもたらすか。 (松岡等)

川俣正さん制作

金沢21美企画展「変容する家」

 川俣さんが作品制作の現場に選んだのは、週末には観光客らであふれる同市広坂、兼六園の真ん前にあるスクランブル交差点近くの五階建ての空きビル。中に入ると、三階から屋上へ向けてアトランダムに廃材が組み立てられた作品が出来上がっていた。内部から屋上に向かってすり鉢状に広がる構造。屋上に上がると、巨大な鳥の巣の中に入っているかのようだ。

 集めた廃材は約六十トン。その中にあった数メートルの梁(はり)が三階から屋上へと貫くように使われている。「他の街と違い、廃材の中に障子戸やふすまなどが数多くあったのが古民家の多い金沢らしさ。地元の人には、どこかで見たことのあるふすまや障子戸が使われていると思ってもらえるのでは」

    ◇

 タイトルは「金沢スクウォッターズ・プロジェクト」。不法占拠を意味するが「僕が若いころはニューヨークなどではアーティストたちが廃屋をアトリエにするなんてことをやっていた。不法と言えば不法だけど、誰も使っていないし、空きビルは社会の中間的な存在の場所」と川俣さん。「自分たちの表現の場を自分たちの手で開拓すること」でもあるという。

 世界中のさまざまな場所に、作品制作を通じてかかわってきた。「美術館やギャラリーといった美術プロパーとは違う場所」に作品を出現させる意義を強調する。それはいわゆる芸術作品を公園や街路に置く「パブリックアート」とも異なる。「場所の意味や歴史、トピックを踏まえてプロジェクトにしてきた。地元から反対されたり、行政や消防の人たちから『危ない』『勝手なことをやっている』と言われたりする」が、街とかかわりながら制作することも作品の一部だ。

 「変容する家」は、現代美術を扱う21美が、あえて美術館の外へ出て街中で展開する。「僕はへそ曲がりだから、評判になっている美術館には行かないんだ」という川俣さんが初めて金沢で行ったプロジェクト。その美術館にもすぐ近い場所に出現した作品を、地元や観光で訪れる人々がどう受け止め、どんな反応をするかが興味深い。

 かわまた・ただし 1953年北海道三笠市生まれ。84年東京芸術大大学院博士課程満期退学。80年代からインスタレーションの先駆けともいえる仮設的な展示を始め、82年にベネチアビエンナーレ、87年、92年にドクメンタに参加するなど国内外でプロジェクト多数。廃材を仮設する手法で場所や周囲の環境に積極的にかかわる作品を制作し、場所の持つ意味や記憶を引き出したり、問い直したりする。2007年からパリ国立高等美術学校教授。

 東アジア文化都市2018金沢のコア事業として、金沢21世紀美術館による現代美術の企画展「変容する家」が、9月15日から11月4日まで金沢市内3エリアで開かれる。

 まちを舞台にした大規模な現代アート展。日本、中国、韓国から、国際的に活躍する各国を代表する作家から注目を集める若手まで22組のアーティストが、空き家や工場跡、寺院などを使い、「家」をテーマにしたさまざまな作品を展示する。

◇参加アーティスト(敬称略)

 【広坂エリア】(2会場) 川俣正、ミヤケマイ、チウ・ジージエ(全域)

 【石引エリア】(6会場) オーギカナエ、ギムホンソック、山本基、呉夏枝、風景と食設計室ホー、ヤン・ヨンリャン、村上慧

 【寺町・野町・泉エリア】(10会場) ス・ドホ、ソン・ドン、ムン・キョンウォン&チョン・ジュンホ、伊能一三、宮永愛子、ハン・ソクヒョン、さわひらき、チェン・ウェイ、魚住哲宏+魚住紀代美、リ・ビンユアン、イ・ハンソル、グゥ・ユルー

 

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