トップ > 北陸中日新聞から > 北陸文化 > 記事一覧 > 8月の記事一覧 > 記事

ここから本文

北陸文化

【能楽おもしろ鑑賞法】21  能「昭君」胡国に娘、嘆く父描く

能「昭君」の後場。胡国の王、韓耶将が恐ろしげな姿で現れる。奥に座っているのは子方が演ずる昭君=2008年3月2日、石川県立能楽堂で

写真

 映画と能は意外と表現方法が似ている。場面が急転換し、時間も一瞬で巻き戻る。一方で決定的に違う点も。金沢能楽会の九月定例能で上演される「昭君(しょうくん)」。映画とは違う手法で攻略しよう。

 昭君とは、中国・前漢の後宮にいた王昭君のこと。古代中国四大美人の一人で、匈奴(きょうど)(胡国(ここく))の王(能では韓耶将(かんやしょう))へ戦争終結の証(あかし)として献上された。後宮には三千人もおり選抜は似顔絵で。他の女性は絵師に金品を贈って美しく描かせたが、昭君は渡さなかったという。怒った絵師は地味に描き、美女を惜しんだ帝に選ばれてしまった。

 今昔物語集や和漢朗詠集にも取り上げられ日本でも古くから知られた物語。映画なら美しい女優が昭君をあでやかに演じるだろうが、能では子方がこの役を担う。作者は映像映えを捨て、悲運に見舞われた親の心を描こうとしたのだ。

 「枯れたら私は死んだと思って」と旅立ちの前に昭君が植えた柳が、弱りだす。驚いた父(前シテ)は鏡を持ち出し、娘の姿が映ることを老妻(ツレ)と念じる。見えたのは、娘と現れた韓耶将(後シテ)の恐ろしげな姿。親の恨みが怪異な容貌を描きだしたのか。夫婦が老人なのも弱い立場の強調だろう。

 前半で父が退場するなど構成にいささか難はあるが、「悲劇は当人だけでなく残された家族にもある」と主張する能。四大美人は適度に想像し、随所に隠された父の葛藤を鑑賞したい。(笛)

◇九月定例能番組(9月2日午後1時、石川県立能楽堂)

 ▽能「小督」(シテ藪俊彦、小督松田若子)▽連吟「三輪」(笠間啓ほか)▽狂言「蚊相撲」(シテ炭光太郎)▽能「昭君」(シテ高橋右任、ツレ渡辺茂人、子方福岡甚三郎)

 ▽入場料=一般2500円(当日3000円)若者割(三十歳未満、当日券のみ)1000円、中学生以下無料、(問)同能楽堂=電076(264)2598

 ※能楽堂の駐車場は工事中。石引駐車場を使えば駐車券がもらえる。

 

この記事を印刷する

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索