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北陸文化

【雨乃日珈琲店だより ソウル・弘大の街角から】(7) 音楽と社会

「上」チャリティーはがき(2018年。現在展示販売中)。売り上げは西日本豪雨災害義援金に

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不当な力に声上げる

 世界を旅し、現地のアーティストと交流しながら演奏を続けるシンガー・ソングライター、枡本航太さん。今年七月に韓国ツアーを行い、雨乃日珈琲店でも二〇一四年以来四度目となるライブを企画してくれたのだが、その時に対バンとして彼が呼んだ韓国人ミュージシャン、キム・ドンサン(金東山)さんも魅力的な人物だった。

 一九七〇年代のフォークシンガーのように、ギター一本と素朴な歌声でメッセージを届ける。彼の代表曲であり、ライブでも披露した『阿●(アヒョン)屋台三十年史』は、八〇年代からソウルの阿●という下町で屋台を営み、やがて都市開発により居場所を奪われてしまう、ひとりのおばあさんが見た風景を歌った曲だ。近年耳に入ってくる音楽にはあまりない、細部に宿るリアリティーと強い目的意識にぐっと来てしまった。

映画『パーティー51』の2015年上映時のポスター

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 自らを「出張作曲家」と称する彼は、現地を訪れ人々の話を聞き、創(つく)った歌を届けるというスタイルで活動している。この曲は十六年、十分な保障もなく行政により強制的に撤去されてしまった阿●の屋台村の現状を知ってもらうべく、仲間のミュージシャンたちと屋台跡地でライブを繰り広げた時に創(つく)られたものだ。

 キム・ドンサンさんのように、韓国で活動するインディミュージシャンの中には、社会に密接した音楽活動を行う者も少なくなく、その姿に頼もしいものを感じている。

 二〇〇九年から一一年にかけて、不当な退去を迫られた弘大のうどん屋にミュージシャンたちが立てこもり、連日ライブを行った。その姿はドキュメンタリー映画『パーティー51』に収められている。日本では一五年に上映されているので、ご存じの方もいるのでは(幸いにも声をかけてもらい日本語字幕を担当した)。時がたった現在も日本各地で自主上映会が開かれており、日本の人たちの心にも響くものがあるのだろうと確信している。次回上映は八月十日、大阪心斎橋スタンダードブックストアにて。金沢でも上映会が開かれるのを期待したい。(文・清水博之、書・池多亜沙子/しみず・ひろゆき=ライター、いけだ・あさこ=書家、金沢市出身)

●は、「山」の右に「見」

 

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