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北陸文化

【美術】現代の価値観どこから? 「起点としての80年代」展

1980年代の美術に現在の美術潮流の源流を探る「起点としての80年代」展=金沢21世紀美術館で

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金沢21世紀美術館

 一九八〇年代と聞いて何を思い浮かべるだろう。バブル経済、家庭用ゲーム機、消費税、ポストモダン、ベルリンの壁の崩壊…。金沢21世紀美術館で開かれている「起点としての80年代」展は、日本の現代美術において八〇年代がどんな時代だったのかを再評価、検証する。現在の美術がテーマとする潮流を“逆照射”しようとする試みでもある。 (松岡等)

 八二年に「画家宣言」をしたことで取り上げられた三六年生まれの横尾忠則さんを除けば、出品作家のほとんどが一九四〇年代末から六〇年代初めに生まれ、現在もそれぞれに活躍している作家たちだ。多くが二十歳代で発表された作品で、現在から見てもみずみずしい。

 具体、もの派、ミニマル・アートなど、コンセプチュアルで抑制的、抽象的な作品が主流となっていった反動から、八〇年代の日本では色彩豊かな絵画や具象彫刻が復権したとされる。それは行き詰まったようにも見える絵画や彫刻という美術の本流で、もう一度新たな可能性を探る試みでもあったようにみえる。

 展覧会が八〇年代に「起点」を見ようとするのは、一定の空間をさまざまな作品を配置することで空間そのものを作品化しようとするインスタレーションという形式、作品制作への参加や社会との関係、美術館や画廊とは異なるオルタナティブ・スペース、メディア・アート、日常性に視点を置く表現など。いずれも現在の美術が取り組むテーマであり、その出発点が見てとれる。

 一方、段ボールを素材にポップで立体的なグラフィックアートで商業的にも人気を集めた日比野克彦さん、自ら名画や歴史上の人物にふんした写真の森村泰昌さん、国籍も性別も判然としない不可思議な木彫りの人物像の舟越桂さんら、その強烈な作家性から一般にも知られた作家たちもまた、八〇年代美術の流れの中にあったことが見えてくる。

 アニメや漫画などのサブカルチャー、アイドル文化やJ−POPにつながるニューミュージック、電子ゲームやパソコンの登場など、八〇年代文化を見直す動きが盛ん。その中で、現代美術における八〇年代の再評価、検証はまだ始まったばかり。今回が世代で切り取った断面であるなら、八〇年代を出発点に現在につらなるテーマごとの展示、八〇年代に出発した作家がどのように活動を変容させていったのか、今後は縦軸の展示についても見たくなる。

 今回、時代の最先端を紹介する21美が八〇年代美術を取り上げた理由に「八〇年代以降の新しい価値観を提案する作品」を収集方針に掲げていることが挙げられている。昨年四月に島敦彦館長が就任。混沌(こんとん)として文脈が見えにくい現代美術を扱う21美にとって、今回の試みが美術館としての役割をあらためて見つめ直す意味があるようにも思える。十月二十一日まで。

 ◇出品作家(五十音順、敬称略) 石原友明、今村源、大竹伸朗、岡崎乾二郎、川俣正、杉山知子、諏訪直樹、辰野登恵子、戸谷成雄、中村一美、中原浩大、日比野克彦、藤本由紀夫、舟越桂、松井智恵、宮島達男、森村泰昌、横尾忠則、吉沢美香

 

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