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北陸文化

【能楽おもしろ鑑賞法】19 能「加茂物狂」 訳あり夫婦の再会

祭礼の人ごみの中、夫を慕って狂い舞う女(シテ)。ササには葵の葉が付いている=2006年7月2日、石川県立能楽堂で

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 能にはミステリアスな男女を描いた作品もある。「加茂物狂」だ。加茂(賀茂)社の祭礼で狂乱の舞を見せる女、の意味。金沢能楽会の七月定例能で上演される。

 男(ワキ)が登場。従者(ワキヅレ)がいるので、それなりの身分らしい。「われ、さる子細あって東(あずま)に下り…はや十カ年におよびて候」と語る。シテ方の謡本では三年だが、長い都落ち。古里が心配になり、京へ戻ったところだ。

 五条にある家に妻を訪ねるが、物詣でに出たまま行方知らずになっていた。今日は加茂の御神事(今でいう葵祭)なので、妻と再会できるよう祈ることにした。少々訳ありの男らしい。

 場面は加茂社に。人ごみの中、ササを手にした女(シテ)が狂ったように舞い、十年も帰ってこない夫を慕う気持ちを吐露する。ササにはハート形をした葵の葉が付いているのにご注目。

 声を掛けた男は、この女が妻だと気づく。だが、人目をはばかって名乗れず、舞歌を手向けて祈れば願いはかなうと勧める。

 女は粗末な衣を、優美な長絹に着替え、烏帽子(えぼし)をかぶる。イロエ、曲舞(くせまい)、中ノ舞と舞い続ける姿は美しい巫女(みこ)のようだ。

 舞い終え、ようやく男が夫だと気付くが、やはり人目を気にして名乗れない。別々に五条へ帰り、やっと「逢瀬(おうせ)の道」に。十年も待った女。当時のトレンディードラマなのだろうか。訳ありの中身を想像しながら鑑賞しよう。 (笛)

◇七月定例能番組(7月1日午後1時、石川県立能楽堂)

 ▽能「加茂物狂」(シテ松田若子、ワキ北島公之)

 ▽狂言「寝音曲」(シテ炭哲男)

 ▽仕舞「氷室」(シテ藪俊彦)

 ▽能「大会(だいえ)」(シテ広島克栄、ツレ木谷哲也、ワキ苗加登久治)

 ▽入場料=一般2500円(当日3000円)若者割(三十歳未満、当日券のみ)1000円、中学生以下無料。(問)同能楽堂=電076(264)2598

 

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