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北陸文化

美術品に適正な評価を 日本アート評価保存協会

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 美術品の公正・適正な価値を提示し、健全な市場形成を図る−。一般社団法人「日本アート評価保存協会」(東京・銀座)の目的だ。コレクターとして知られるイセ食品グループ会長、伊勢彦信さん(富山県高岡市)の肝いりで設立された。次世代のコレクターを育成するとともに、日本美術の素晴らしさを国内外に発信しようと活動している。 (山本義之)

伊勢彦信さん呼び掛け設立

委員19人はボランティア

 設立は二〇一三年七月。日本では美術品の評価が任意団体の査定やオークション会社の落札価格で決まるため、適正かどうか不安を感じる消費者が多い。このため安心して美術品が購入できるよう、美術への正しい知識や情報を提供していくことが必要−。伊勢さんの呼び掛けに応じた各分野の専門家計十九人が評価委員を務め、運営している。

 掲げる活動内容は(1)美術品の評価査定(2)全国の美術館展覧会の評価および表彰(3)日本美術の普及・啓蒙(4)若手コレクターの育成(5)日本の工芸美術の海外への広報、普及−など。

 (2)として設立初年度から続けている秀逸企画賞の授与が定着。展覧会の評価が入場者数によって決められがちで、小規模館の有意義な企画展に光が当たりにくい中、真に秀逸な企画を表彰する目的で設けられた。美術館・博物館の設置者である首長や財団理事長を表彰することで、館の運営を活性化させる狙いもある。過去五年間で六館が表彰された(表参照)。

 このほか(4)として、ほぼ毎月アートにかかわるさまざまな人を招いた講演会を実施している。人選を担う安村敏信副会長・事務局長(長野県小布施町・北斎館館長)は「美術の世界は幅広く、ジャンルにこだわらずに招いている」と話す。

 伊勢さんは「美術品をまんべんなく評価する機関は当協会だけ。各ジャンルの著名人がボランティアで参加してくれ、ありがたい」と話している。

協会の意義を語る河合正朝代表理事

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代表理事 河合正朝さんに聞く

地方の小さな館にも注目

作り手、買い手育てたい

 日本アート保存協会の河合正朝(まさとも)代表理事(千葉市美術館館長)に協会の意義や課題を聞いた。

 −設立の趣旨は。

 近年、日本美術に対する関心が今ひとつ高まっていない。美術館に行く人や美術品を生活の中で楽しむ人を増やしたい。これが根本の趣旨。

 美術商業界は閉鎖的。初心者がふらっと店に入って買い物をする雰囲気が出来ていない。ネット売買が増えているが、ちょっと良いものや古いものを欲しくても、買う方法が分からない人は多い。テレビの「なんでも鑑定団」が受けるのは偽物の問題があるから。安心して美術品が買える環境づくりが出発点だ。

 −協会の認知度は。

 「秀逸企画賞」は浸透してきた。地方の小さな美術館でも優れた展覧会を催している。館の設置者を表彰するのがミソで、自治体にも感謝されている。当初は自薦・他薦含め十件程度だったが、昨年度は約二十件の応募があった。

 −事業収益にもつながる評価査定活動は。

 査定は減少傾向だ。日本の市場自体も盛り上がらない。世界のオークションで日本人の落札率は極めて低い。参加する上での安心感がないからだろう。ここを改善しなければならない。

 −今後の課題は。

 日本の工芸を海外に発信したい。(イセコレクションを管理する)イセ文化財団が予定するベトナムでの工芸シンポジウムに協力を検討中。もっと協会の知名度を高め作り手と買い手の双方を育てたい。それが美術館の活性化につながる。

 かわい・まさとも1941(昭和16)年、東京生まれ。慶應義塾大大学院文学研究科修了。日本絵画史専攻。2005年慶大教授退職。コロンビア大考古美術史学科客員準教授、メトロポリタン美術館客員シニアフェロー。ブラウン大学客員教授等を歴任。英国・イーストアングリア大学名誉文学博士。慶大名誉教授。千葉市美術館館長などを務める。

 

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