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北陸文化

【バン記者・樋口薫の将棋見て歩き】 (1)「将棋会館」って どんなところ?

 新聞の「番記者」とは、特定対象者を追う記者のことです。この欄は、政界の「番記者」ならぬ、盤上で戦う囲碁・将棋の世界「棋界」の「バン(盤)記者」がお届けします。

プロ棋士たちの戦場

 最年少棋士、藤井聡太七段(15)の活躍、羽生善治二冠(47)と井山裕太七冠(28)の国民栄誉賞受賞などで最近、将棋や囲碁の世界が話題です。プロ棋士は普段どんなふうに対局しているの? タイトル戦やイベントの会場はどうなってる? 本紙の囲碁将棋担当の「バン記者」である私、樋口薫が毎月、現場を訪ね、ルールを知らなくても楽しめる情報をお伝えします。

将棋会館全景

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 第一回は、東京・千駄ケ谷の将棋会館にやって来ました。JR千駄ケ谷駅から南へ徒歩七分ほど。のどかな鳩森(はとのもり)八幡神社の裏手に位置します。将棋のプロ公式戦のほとんどはここか、大阪の関西将棋会館のどちらかで行われます。まさに棋士たちの“戦場”です。

 館内を案内してくれるのは、日本将棋連盟の常務理事で、現役の棋士でもある森下卓(たく)九段(51)。勝負師とは思えないほどの物腰の柔らかさに、思わず恐縮してしまいます。

 対局場のある四階に通されると、大広間で王位戦のリーグ戦対局が始まる直前でした。棋譜(きふ)を付ける記録係(プロを目指し修業中の若者が務めます)、観戦記を書く観戦記者の横に座ります。駒を並べ終えた二人の棋士は無言で瞑想(めいそう)にふけり、メモを取る記者のペンの音が気になるほど、空気が張り詰めていきます。

 「時間になりました」。午前十時、記録係の合図で先手の棋士が小考の後、ゆっくりと初手を指します。数手進んだところで、息が詰まりそうになり退出。対局室にいたのはほんの十数分ほどなのに、緊張感のせいか慣れない正座のせいか、足がしびれていました。

プロ棋士の対局を見る樋口薫記者(右から2人目)と森下卓九段(同3人目)=東京都渋谷区の将棋会館で

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 「昭和の時代は雑談もあり、午前中はにぎやかだったんですが」と森下九段。近年は序盤から激しい戦いになることが増えており、「隙を作らないよう一手目から気が抜けません」。

 事務局のある三階より上への立ち入りが許されるのは関係者のみですが、一、二階は一般客も入れます。一階は売店。扇子や書籍などが並ぶ中、目を引くのがクリアファイルやジグソーパズルなどの藤井七段グッズ。ただ心なしか、棚がスカスカしています。「実は、大好評で品不足が続いているんです」と森下九段。藤井七段の人気、恐るべし。

 二階は、客同士で対局できる将棋道場。日によってはプロ棋士による指導対局や教室が開かれることも。最近のブームで、土日は入場制限がかかるほどの盛況だそうで、子どもの来場者も目立ちます。

 そういえば、森下九段の息子さんはNHKの朝ドラ「あさが来た」にも出演した俳優の森下大地さん(20)。棋士になってほしいと思わなかったのでしょうか。「プロを志しても九割方が脱落する厳しい世界。別の道に進んでほしいと思っていました。そしたら、もっと厳しい世界に入ってしまいましたが」と苦笑します。

 最後に、森下九段に尋ねました。将棋会館ってどんなところですか? 「修業時代から四十年間、この中で生きてきました。多くの苦しみがあり、喜びもありました。そんな棋士たちの思いが詰まった場所です」

 (第三土曜日に掲載します)

 

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