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北陸文化

【アート】江口寿史氏 イラストレーション展「彼女」 “ポップ”に共感集まる

RealWineGuide1号表紙(2002年)

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 漫画家、江口寿史氏のイラストレーション展「彼女」(北陸中日新聞など主催)が二十八日、金沢市の金沢21世紀美術館で始まるのを前に、美術編集者で評論家の楠見清・首都大東京准教授=写真=に「江口論」を寄稿してもらった。

寄稿 楠見清

きょうから 金沢21世紀美術館

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 日本のマンガが海外でもポップカルチャーとして認められる現在では、逆に想像しづらいかもしれないが、江口寿史は日本のマンガに欧米の“ポップ”の感性と概念を最初に持ち込んだマンガ家だった。デビュー前夜、一九七〇年代半ばのマンガは劇画や少女マンガによって映画や文学に接近していたが、江口はそういったシリアスな表現とは程遠いナンセンスなギャグマンガに、洋楽やファッションなど八〇年代にニューウェーブという世界共通の若者文化となる身体的なセンスを投入してみせた。

 思えば、週刊コミック誌を通じて深夜放送のディスクジョッキーのように、今でいえばユーチューバーのように語りかけた。江口にとってマンガはメディアだった。その結果、当時少年少女だった読者からJポップ世代のミュージシャンやクールジャパンと呼ばれる現代のクリエーターが輩出された功績は大きい。

ムック「ハロー!チャンネルvol.8」裏表紙(キッズネット)(2012年)

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 江口は本の装画や広告の仕事を通じ、同時代のイラストレーターやポップアーティストの表現にも傾倒していく。時代を反映した身近な人物像は、かつてノーマン・ロックウェルが描いた米国の大衆の姿にも匹敵する現代日本を生きる私たちの肖像ともいえる。

 江口の描く女性像が多くの共感を集めるのは、時代に敏感であると同時にどこか普遍性を持ち合わせているからではないか。近年のワイン雑誌の表紙画は大正時代の洋酒瓶を手にした美人画ポスター、「ギターを持つ少女」はフェルメールからピカソまでが好んだ画題にそのまま重なる。この偶然の一致が暗示するものを美術館で見られるといい。

◇4月28日(土)〜5月27日(日) 午前10時〜午後6時(入場は閉場の30分前まで、最終日は午後4時閉場。会期中無休)=金沢21世紀美術館・市民ギャラリーB(金沢市広坂1の2の1)

【左】1935年頃のアサヒビールのポスター(アサヒグループホールディングス提供)【右】フェルメールの「ギターを弾く女」(ケンウッド・ハウス所蔵)

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 江口氏が40年間追い求めた女性の美を新作を含む約250点のイラストで紹介

前売り料金 一般700(900円)、高・大生500円(700円)、小・中生300円(500円)。カッコ内は当日料金

前売り券 チケットぴあ、ローソンチケット、セブンチケットで発売 (問)北陸中日新聞事業部076 233 4642

※平日の午前9時半〜午後5時半

 くすみ・きよし 1963年生まれ。美術編集者、評論家。2008年カナダ、バンクーバー美術館の企画展「KRAZY!」共同キュレーターとして江口寿史らを選出。「彼女」展で監修を務める。著書『ロックの美術館』、共著『もにゅキャラ巡礼』ほか。現在首都大学東京准教授。

 江口寿史 1956年熊本県水俣市生まれ。中3で千葉県野田市に転居。千葉県立柏高校卒業。77年「週刊少年ジャンプ」にてデビュー。代表作「すすめ!!パイレーツ」「ストップ!!ひばりくん!」「エイジ」など。斬新なポップセンスと独自の絵柄で漫画界に多大な影響を与える。80年代からはイラストレーターとしても活躍。92年短編集「爆発ディナーショー」で第38回文芸春秋漫画賞受賞。2018年4月、最新画集「step」と「江口寿史の美少女塗り絵」を同時発売。

 

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