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北陸文化

【美術】生きる 強い意志 描き込む 鉛筆画 木下晋さん個展 富山

「無視」(2016年、ケント紙、鉛筆、52.6センチ×79センチ)

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 緻密な鉛筆画で知られる富山市出身の画家木下晋さん(70)=東京都町田市=の個展「生を見つめる鉛筆画家」が富山市開のギャラリーNOWで開かれている。三年ほど前から、パーキンソン病で闘病する妻の君子さん(69)をモデルに描く作品を中心に展示。一貫して描き続けるのは「死を見詰めながら生きる人」の姿だ。

 木下さんは、最後の瞽女(ごぜ)と呼ばれた小林ハルさん、元ハンセン病患者の詩人・桜井哲夫さんらをモデルに、過酷な運命の中で人間存在の根幹に迫ろうとしてきた。10Hから10Bまでの鉛筆による階調を駆使し、人の肌に刻まれたしわの一つ一つをケント紙に描き込む手法は変わらない。

 著名な作家から描いてほしいという依頼を受けることもあるが、「僕が描きたいのは肖像画ではない」と断ってきた。闘病する君子さんを描くが「私情は入れたくない」と言い切る。「パーキンソン病は思ったように体が動かない病気で日々症状も違う。生活の中でいや応なく死を意識し、人生を振り返りながら今を生きている。そこに出ている人間の姿にひきつけられるのだと思う」と。

 強い意志を秘めたような両目だけを描いた絵は「無視」と題された。「病気の治療は自分との闘い。普通の意味でいう『無視』ではなく、自己の闘い、自分自身を見つめる目」。くるぶしから下の足だけを描く「起(た)つ人」からも生への意志がにじみ出る。

「起つ人」(2017年、ケント紙、鉛筆、190センチ×125センチ)

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 生活を共にしながら、「今までできたことができなくなる。自分が壊れていくのを目の当たりにする。それは本人が一番分かっていることだが、それが生きること」と感じる。そして自らの画家としての人生も重ねる。「絵を描くのも同じだということに思い当たった。年齢を重ねてくると、若い時にできたことができなくなる。描くにも、本当に強い意志がないと継続できないから」

 今年二月に亡くなった作家の石牟礼道子さんを描いた作品がある。出版社の企画で対談の予定があったのが事情で実現せず、数カ月後に一度だけ会って小品を描いた(今回展示はない)。木下さんは「彼女の目には人間の業を乗り越えた美しさを感じた」と話す。

 二十九日まで。(問)ギャラリーNOW076(422)5002 (松岡等)

 

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