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北陸文化

【能楽おもしろ鑑賞法】17 能「田村」本当の主人公は観音様

勝修羅能「田村」の後シテ。戦闘するのは千の手を持つ観音様だ=2007年2月4日、金沢市の石川県立能楽堂で

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 武人が主人公となる修羅能。自らの勝ちを物語る勝修羅は三番のみである。金沢能楽会の五月定例能は、三月の「八島」に続き、勝修羅能の「田村」を上演する。シテは平安初期の征夷大将軍坂上田村丸(田村麻呂)。だが、本当の主人公は別にいる気がする。

 舞台は田村丸創建と伝えられる京都・清水寺(謡ではセイスイジとも)。全山満開の桜。東国からの旅僧(ワキ)の前に花守の少年(前シテ)が現れ、寺の由緒を語る。周囲に見える名所も教えるが、山から出た月に気づき「春宵(しゅんしょう)一刻値千金」「天も花に酔(え)えりや」と絶唱。美しい場面だ。

 少年は、田村丸の化身だとほのめかし田村堂の内に。僧の読経で、田村丸の霊(後シテ)が武人姿で再登場。東夷平定もこの寺の観音の力だと述べ、勅命で鈴鹿山の鬼神を退治した様子を生き生きと語るのである。

 しかし、戦闘シーンで活写されるのは、上空に現れた千手観音の奮闘。千本の手ごとに弓を構え、一斉掃射で山を埋めた鬼神は全滅してしまう。結びの謡は「敵は亡(ほろ)びにけり、これ観音の仏力なり」と観音賛歌。前場でも、清水寺の桜が格別美しいのも「大悲の光、色添う故か」と観音の浄土が強調される。

 観音像は女性的な大慈大悲の姿をしているが、毘沙門や龍など三十三の姿で衆生を困難から救う力強い存在でもあるという。シテは刀すら抜かない。主人公は観音菩薩(ぼさつ)に違いない。勝修羅能だが、武人の苦悩を描かない、神能に近い趣にご注目。 (笛)

◇五月定例能番組(5月6日午後1時、石川県立能楽堂)

 ▽能「田村」(シテ木谷哲也)

 ▽狂言「水掛聟」(シテ清水宗治)

 ▽仕舞「大江山」(シテ佐野由於)

 ▽能「胡蝶(こちょう)」(シテ松本博)

▽入場料=一般2500円(当日3000円)、若者割(30歳未満、当日のみ)1000円、中学生以下無料(問)同能楽堂076(264)2598

 

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