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北陸文化

【舞台】ダンスカンパニー「ハンドルズ」公演 「見せる」喜びいっぱい

金沢市のダンサーなかむらくるみさん(右)とハンドルズのメンバーのダンス

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 自分の体で表現したい、何かを伝えたいという気持ちが舞台で躍動していた。三月十一日に金沢市大和町の市民芸術村パフォーミングスクエアであったダンサー・振付師の近藤良平さんと埼玉県の障がいのある人たちでつくるダンスカンパニー「ハンドルズ」の公演「初めての そんなふうな 気がしない」。金沢市内の障害者らも加わり、障害をあえて笑いにするコント、身体の特徴をそのまま生かしたダンスには、障害の有無を超えた「表現への意欲」があふれた。 (松岡等)

金沢市民芸術村

コントも次々 沸く会場

 近藤さんは、学ランを着た男性だけのダンス・カンパニー「コンドルズ」を主宰し、テレビなどでも活躍。埼玉県の福祉関係部局からの誘いで二〇〇九年から彩の国さいたま芸術劇場でほぼ年一回のペースでハンドルズの公演を続ける。今回はその初めての県外公演で、事前に金沢21世紀美術館で障害者とのダンスのワークショップを二度行い、公演に九人が参加した。

 舞台では、ハンドルズメンバー八人と近藤さんのほか、手話通訳やコンドルズのメンバー、金沢市のダンサーなかむらくるみさん(28)が、障害の程度や特質もさまざまな人たちと絡みながら、時に障害についての「自虐ネタ」を交えた短いコントを次々に繰り出し、観客を引き込んでいく。

舞台上で表現する意欲と喜びがあふれたハンドルズの公演=いずれも金沢市大和町の市民芸術村パフォーミングスクエアで((C)池田ひらく、金沢21世紀美術館提供)

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 なかむらさん演じるコケティッシュな女性の後を、三人の車いすの男たちがつけるダンス。見ようによってはストーカーを思わせ、なかむらさんは「どう受け取られるかヒヤヒヤもした」というが、少女が振り返るたびに男たちが恥ずかしがって素知らぬふりをして笑いをとる演出と、そのうち一人の男性と少女が恋に落ちて少女の手と男の足先が触れながら踊るドラマチックで美しいダンスが、そんな心配を吹き飛ばした。

 また、向き合ったペアが静かな音楽の中でゆっくりと同じ動きをしようとする「合わせ鏡」のダンス。障害の違いから、相手と同じ動きにはならないけれど、そのことが、それぞれの身体の違いを浮き立たせ、人にはそれぞれに違いがあるという当たり前のことを観客は知らされる。

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 能楽師の安田登さんは著書「能 650年続いた仕掛けとは」で、「『見られ、笑われる』受動的な芸能を、観阿弥・世阿弥は能動的なものへと逆転させた」と紹介している。ひきこもりの人たちとのプレゼンテーションのワークショップで、人前で緊張してしまう、外に出ると見られている気がしてしまうという人への対処法を「自ら『見せる』というスタンスに立ってしまえばいい」と。

同じ動きをしようとしながら、同じにならないことで人それぞれの違いが際立つダンス

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 「演者が『見せる』というスタンスに立った途端に、観客は『見せられている人』となり、今度は受身になる」。世阿弥はさまざまな手法を講じ、「『見られる』存在から『見せる』存在への転換」を「身分制社会の中で優美にこれを成し遂げた」という。

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 ハンドルズを続ける近藤さんは公演後に「手や足が思うように動かない、中には顔が動かなくても、表現できるということで自信を持つ。彼らは表現したくて仕方がないのだと思う」と話した。参加した金沢市の山口映子さん(61)は「五年前から車いすでの生活だが、上半身がまだまだ動いていることを表現したかった。充実感、達成感でいっぱい。車いすダンスでデビューできてこれ以上の幸せはない」と。舞台で観客と向き合うことで得る喜びとは、自らが主体になれることにあるのだと、教えられる公演だった。

 

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