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北陸文化

【コミュニティシネマ 街中銀幕から】 アカデミー賞の思い出

 毎年恒例のアカデミー賞が発表された。賞の結果は映画館の番組編成に影響するので、結果に注目しながら午前中を過ごす。特に脚本賞と外国語映画賞に注目している。脚本が良い映画は面白いに決まっているし、外国語映画賞は英語以外のたくさんの国からのよりすぐりの賞だ。見どころがないはずがない。今年は脚本賞にノミネートされた『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』と、外国語映画賞にノミネートされた『ナチュラルウーマン』の上映がシネモンドで四月からと決まっていたので、受賞結果を見ながら上映日程を考えようと思っていた。結果『ナチュラルウーマン』は見事に受賞。受賞は逃したが『ビッグ・シック』は、現代のアメリカの人種問題を笑いとともに鮮やかに描いた傑作なので、どちらも少し長めの上映期間を設けた。両作品とも期待してほしい。

 思い出深いのは『英国王のスピーチ』が二〇一一年に作品賞、主演男優賞、監督賞、脚本賞と主要四部門を独占した時。前年の十二月に石川県ではシネモンドだけの上映の予定だったが、評判が伝わってくるにつれ、配給会社から上映館数が増えるかも、という話になってきた。そして四部門受賞の結果、シネコンと同時公開、さらに上映日程が一カ月ほど繰り上がることに。

 良質ないい映画だが、洋画不振な今の時代ならミニシアターで上映してもおかしくはない作品だと思っていた。しかし、受賞したことで一気に知名度が上がり、九十席しかないミニシアターの規模に余るほどの作品になってしまった。公開規模が拡大するのは当然のこと。石川県内で他館との同時公開をほとんどすることがないので、期待と不安を抱えながら宣伝などの準備を続けた。そして上映が始まる前日、ふと隣のテナントのテレビに目を向けたら津波の映像が映しだされていた。東日本大震災が起きていた。

 それからは皆さんもご存じの通りいろいろとあった。世間には自粛ムードが漂っていたが、被災した地域の劇場は、映画を見てもらうことで少しでも元気を与えられることができればと、可能な限り上映を続けていたと思う。被災地への巡回上映を続けている人もいる。日常の延長の非日常の場所としての映画館の意味を考えた。

 (シネモンド支配人・上野克)

 

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