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北陸文化

【美術】作ると見る 生まれる「物語」 黒部市美術館

今村文《無題》2010年、エンカウスティーク、漆喰、パネル(直径139.5センチ、厚さ3.5センチ)

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 富山県黒部市美術館で北陸ゆかりの作家四人の作品を集めた企画展「CONTACT−交換する物語の部屋」が開かれている。作品の表層に現れる質感にこだわったり、意味を持つ記号や言葉の機能を問い直したり、四人のそれぞれのやり方で「物語」や「意味」をいったんは解体しながら、それぞれに再構成したようにも見える作品群は、見る側に新しい物語を想像させる。 (松岡等)

今村文、神谷麻穂、玉分昭光、たがゆうこ

北陸ゆかり 4作家で企画

 今村文さんは一九八二年、愛知県生まれ。金沢美術工芸大大学院工芸研究科絵画専攻修了。顔料を蜜蝋(みつろう)で溶かして塗り込んでいくエンカウスティークの技法で、漆喰の上に折り重なるように草花をすき間無く描き込む。淡い色彩と薄く膜を張ったような表面が独特の質感を放つ。

 やや黄色にくすんだ紙に、淡いピンクの水彩で描いた植物を切り抜いてそのまま差し出される作品群も、今村さんが作り続けるシリーズ。重なる花や葉、茎から根の一本一本までを細かに切り抜かれたさまは、押し花や標本のようにも見えながら、抽象性を帯びてみえてくる。

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神谷麻穂《ドローイング》2018年、陶土、磁土(1点は10センチ四方、厚さ2センチ。64点で構成)

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 神谷麻穂さんは八六年、愛知県出身。同大学院研究科工芸専攻。自然や記憶の風景を、土の質感を残して成形したり、地面から型取りした土をさまざまな釉薬を施して焼く作業を繰り返したりして制作。サンゴや貝を思わせる鮮やかな色や滑らかさ、土そのものが持つざらつきを持つ不定型の陶板が複雑に並べられた作品「みち/ふなびと」は、のぞき見た海底のようだ。

 陶芸が生み出す土の質感をさらに追究しているのが近作の「ドローイング」のシリーズ。正方形の陶板に釉薬や絵の具で色や絵を施して焼く作業を繰り返し、ホワイトキューブの壁に掛けられた一枚一枚は抽象画のようだ。陶芸の技法で表現できるさまざまな質感の見本を見ているようでもある。

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玉分昭光《富山ストーリー−水たまりの出来事−》2017年、銅版画、紙(縦80センチ、横60センチ)

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 銅版画で独特の宇宙をつくり出す玉分昭光さんは七五年岐阜県生まれ、富山大大学院教育研究科美術教育修了。富山県に移り住んだ二〇一六年から続ける「富山ストーリー」と呼ばれるシリーズの作品を展示する。自身の身近な生活の中から描き出されたキャラクターが一枚の中で浮遊するように再配置されることで、新しい物語が生み出されているようにも見え、モノトーンの色は見る人の想像を一層かきたてる。

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たがゆうこ《ARAWARU》2017年、アクリル、岩絵具、土絵具、カンバス

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 さまざまなメディアによるインスタレーションやパフォーマンスなども行う作家たがゆうこさんは七六年富山県生まれ、在住。大阪芸術大芸術計画学科卒。展示した絵画作品は、ごく幼い子が描いた動物や人の顔などのようでもあり、あえて意味を排除するために単純化した記号のようでもある。

 絵の前に立つと、いったい作家は何を描こうとしたのかと考えてしまうが、そうすることで、線や色という一つ一つには意味のないものが、描き、配置されることで、何かしらの物語を語る絵画として成り立つことを画面で示しているようでもある。それは取りも直さず、物語とは、描く人、見る人が自身の内面でつくり出していることを示しているとも言える。

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 企画展では、それぞれの作家が同美術館の収蔵する約千点の中から一点を選び、コメントをつけた展示も同時に行っており、四人の作家がつむぐ「物語」を読み解くヒントにもなる。展示は二十五日まで。

今村文さん「花と蛞蝓」

金沢で個展も

 今村文さんの作品約三十点を集めた個展「花と蛞蝓(なめくじ)」が金沢市三社のギャラリー「彗星倶楽部」で開かれている。蜜蝋画や水彩画を切り抜くシリーズのほか蜜蝋を使った立体作品も。町家の中の展示で、美術館とは違った表情を見せる。二十五日まで。月曜休廊。

 

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