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北陸文化

夢二×音楽→モダン表紙 デザインに世相映す 富山・高志の国文学館 

セノオ新小唄第1編「カチューシャの唄」(20版)大正3(1914)年 

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 独特の美人画で知られる竹久夢二(一八八四〜一九三四年)が大正から昭和初期にかけて数多く描いた楽譜の表紙絵ばかりを集めた展覧会「竹久夢二 音楽を描く」が、富山市の高志の国文学館で開かれている。二十六日まで。多様な画風やデザイン感覚を楽しむとともに、楽譜の表紙は、流行歌からオペラなどの歌曲、小唄、民謡など曲のバリエーションとともに、蓄音機とレコード、ラジオの普及など、当時の多彩な音楽文化を映し出している。(松岡等)

 夢二が手掛けた表紙絵のほとんどがセノオ音楽出版社のもの。経営した妹尾幸陽(一九〇一〜一九六一年)は、竹久夢二の詩を愛し、その詩に自ら曲をつけて楽譜として刊行した。夢二が表紙を描いた「セノオ新小唄」の楽譜シリーズ三十五編のうち十七曲が夢二の作詞だった。

セノオ楽譜No.106「宵待草」(7版)昭和4(1929)年 

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 夢二が初めて楽譜表紙を手掛けた「カチューシャの唄」は一九一四年、帝国劇場で芸術座が上演したトルストイ原作の演劇「復活」の劇中歌。主人公カチューシャを松井須磨子が演じ、大流行した。須磨子を思わせる少女の素朴なタッチで描いた。「いのち短し、恋せよ、少女(をとめ)」の歌詞で知られる「ゴンドラの唄」も芸術座の演劇からの流行歌。デザインのモダンさが際立つ。

 夢二の作詞の中でも最もポピュラーな曲の一つ「宵待草」は、もともとあった詩に曲がつけられ、一八年にセノオ楽譜から出版されて流行歌となった。表紙絵の初版は和装だったが、後の版では洋装で、二三年の関東大震災後に出版。祈りを表すかのように、ロザリオを首からかけている。多くの歌手が録音しているが、同名の映画で高峰秀子が主題歌として歌い、その際に西条八十が二番の歌詞をつけた。

中山晋平作曲全集民謡曲「東京行進曲」昭和5(1930)年=いずれも高志の国文学館寄託

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 「カチューシャの唄」「ゴンドラの唄」も作曲した中山晋平は当時のヒットメーカー。夢二は「中山晋平民謡曲」のシリーズでも表紙を描いた。大ヒット作曲「東京行進曲」(一九二九年)は、人気雑誌「キング」で連載された菊池寛の小説を原作にした映画の主題歌で、現代のメディアミックスの先取りのような状況が生まれた。ジャズ、リキュール、ダンサー、丸ビル…などの歌詞が、関東大震災後の復興を印象づけるようで、夢二の絵もリキュールを片手にしたモダンガールを描いている。

 展示する楽譜の表紙絵は約二百四十点。小林加代子学芸員は「楽譜の仕事は夢二の最も脂ののっていた時期と重なる。西洋音楽の楽譜では海外の雑誌などを参考にデザインにも才能を発揮していたことも分かり興味深い」と話している。

 楽譜は東亜薬品(富山市)のコレクション。寄託を受けた同館が公開した。展示の関連イベントとして十七日午後二時からは、「竹久夢二表紙画楽譜による音楽会」(バイオリン・藤田千穂さん、ピアノ藤井亜里沙さん)がある(参加無料)。会期中の金、土、日曜日は午前十一時から蓄音機の実演もある。

 

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