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北陸文化

【能楽おもしろ鑑賞法】15 能「八島」 修羅場の後に寂しさ

勇壮な戦の場面が展開する能「八島」=2010年2月7日、石川県立能楽堂で

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 源義経を主人公にした人気曲「八島(やしま)」が金沢能楽会の三月定例能で上演される。勝ち戦の能とされるが、見どころは勇壮さでないように思える。

 都の僧(ワキ)が源平の古戦場・屋島(能の表記はしばしば当て字)を訪れる。老漁師(前シテ)らが塩屋へ帰り、旅僧に戦物語を聞かせる。

 語るのは平家の景清と源氏の三保乃谷との力比べ。景清が逃げる三保乃谷の錏(しころ)(かぶとから垂れた首回りの防御)を引きちぎり、両者がどっと倒れたユーモラスな話。直後、源氏の忠臣・佐藤継信と平家の若侍・菊王が射殺され、冷たい現実にゾクリ。

 自分は義経だとほのめかして老人は消える。夢で待つ僧に、義経の亡霊(後シテ)が軍装で現れ、戦の話を続けた。

 馬で海に入り平家軍に迫った義経。うっかり弓を落とし、命がけで拾い上げる。「弱い弓を取られ非力を知られるのは無念。命は惜しまぬが名誉は惜しむ」との信念が謡で朗唱されていく。にわかに場面が壇ノ浦へ転換。壮絶な修羅場を義経が駆け回る。

 と思うや戦場の光景はおぼろになり「敵と見えしは群れいるカモメ。鬨(とき)の声と聞こえしは浦風なりけり高松の」と地謡。僧の夢は破れ、朝嵐が吹く屋島の情景に戻ったのだ。

 実はこの表現、継信と菊王の死後にもある。「鬨の声絶えて、磯の波、松風ばかりの音さびし」。主題はこうした寂寥感(せきりょうかん)ではないか。役者たちが幕へ下がるとき、そんな余韻に浸りたい。拍手も送らずに。 (笛)

 ◇

◇三月定例能番組(3月4日午後1時、石川県立能楽堂)

▽能「右近」(シテ藪俊彦)

▽狂言「磁石」(シテ炭哲男)

▽仕舞「網之段」(シテ高橋右任)

▽能「八島」(シテ渡辺茂人)

▽入場料=一般2500円(当日3000円)学生1000円、中学生以下無料

(問)同能楽堂=電076(264)2598

 

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