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北陸文化

【北陸の文化 この1年】

奥能登国際芸術祭で展示された塩田千春さんの作品。芸術祭には目標を大きく上回る人が訪れた=石川県珠洲市で

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 二〇一七年は石川県珠洲市で奥能登国際芸術祭が開催されたほか、工芸分野では石川県で21世紀鷹峯(たかがみね)フォーラム、富山県で国際北陸工芸サミットがあるなど石川、富山両県で全国規模のイベントが相次いだ。富山県美術館がオープンする一方、金沢21世紀美術館は館長が交代。またオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)は井上道義音楽監督の来年三月での退任を発表するなど変化を印象づける一年でもあった。今年の北陸の文化を振り返ってみた。(松岡等)

奥能登国際芸術祭/ 富山県美術館開館 新しい動き地域の期待

 奥能登国際芸術祭はこれまで現代美術と縁の薄かった奥能登地域に強いインパクトを与えた。瀬戸内や越後妻有の芸術祭の成功から、地域のアートプロジェクトが全国各地で開催され、他と違う特色を出せるかが問われたが、「さいはての芸術祭」というコンセプトで、日本海に突き出た半島の先端にある地理的な特色や歴史、文化的な背景を生かした力のある作品が集まった。

 目標を大きく上回るのべ七万人の来場者があり、深刻な過疎化に悩む地域の人々にとって新たな観光の資源として地域を見直す契機になるだけでなく、自信も与えたのではないか。珠洲市以外の地域から連携を求める声も上がっており、三年後の次回開催に向け、地元がこの成功を将来の地域づくりに結び付けていくかが注目だ。

 四月、金沢21世紀美術館は十年間にわたり館長を務めた秋元雄史氏に代わり、富山市出身の島敦彦氏が三代目の館長に就任した。富山県立近代美術館で学芸員としてスタートした島氏は北陸の美術界にも精通。就任直後のインタビューで「地元市民のリピーターを増やしたい」と語った思いが、来年以降、どれだけ具体的な成果を生むか期待したい。

 今年の同館の企画展では前半の「池田学展」、開催中の「ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラー」展など意欲的な個展のほか、館外のディレクターとともに社会とのかかわりの中で美術が何をできるかを模索した「カナザワ・フリンジ」が印象に残った。開館前から同館で活動する鷲田めるろ学芸員がベネチア・ビエンナーレ国際美術展で日本館のキュレーションを担当し、館としての力を示した。

全面開館した富山県美術館=富山市木場町で

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 富山県では、県立近代美術館を移転、新築した県美術館がオープンした。無料の屋上庭園を開放したプレオープン時から大勢の来場者が詰め掛け、県民の期待の大きさをうかがわせた。

 近美からのコレクションは、最先端の現代美術がメーンの21美や、古美術、工芸、地元の近代美術を中心にした作品を扱う石川県立美術館とは異なる近代美術が中心。これを生かしながら、デザイン分野も視野に入れた富山県美の今後の企画を楽しみにしたい。

工芸イベント/音楽祭 3県連携どう進めるか

金沢21世紀工芸祭で作品の説明を受ける山野之義市長(左から2人目)=金沢市東山で

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 この秋の北陸は工芸一色だった。石川県内で開かれた21世紀鷹峯フォーラム、金沢21世紀工芸祭、富山県では国際北陸工芸サミットが開かれ、東京国立近代美術館工芸館が金沢市に移転する二〇二〇年に向けた取り組みが加速した。ただ、こうしたイベントが石川、富山でほぼ同時期にそれぞれに開催され、北陸三県で連携が図られていないのが気になった。

 そんな中で、同時期に富山市の佐藤記念美術館で開かれていた九谷焼の若手作家を紹介する企画展「伝統と創造 現代九谷焼の旗手たち」が印象に残った。石川県内ではそれほど珍しい展覧会でもないが、これが富山市であったことに意義があった。

 逆に石川県内で富山、福井の工芸が紹介される機会が少ないのが気にかかる。国立の工芸館は日本全体の工芸を発信する拠点。国だけではなく移転を強く要望した石川県も責任の一翼を担っているはずだ。地元アピールばかりでない取り組みが求められる。

     ◇

 北陸唯一のプロオーケストラで、来年三十年を迎えるOEKは、井上道義音楽監督の来年三月末での退任を発表した。次期監督は明らかになっていないが、どんな方向で次の十年を見据えるのか、いまだに見えていないのは気掛かりだ。

 井上氏が音楽監督に就任後に積極的にかかわってきたラ・フォル・ジュルネ金沢音楽祭が今年から「いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭」に衣替えして開催されたのも大きな変化だった。開催方式や公演数などの規模はラ・フォル・ジュルネをほぼ踏襲。ほぼ例年並みの十一万人の来場者を確保し、関係者は胸をなで下ろした。

 気軽に音楽を楽しめるというコンセプトの中であっても、音楽の質を維持する努力とともに、「北陸三県」とうたっていくのであれば、富山、福井とのさらなる協力、連携を考える必要があるのではないか。

     ◇

 映画では、石川、富山両県をロケ地とした映画の公開が多い年だった。主要な撮影が高岡市であった行定勲監督の「ナラタージュ」をはじめ、石川県でも吉田大八監督の「美しい星」、仲代達矢さん主演の小林政広監督「海辺のリア」など…。来年にも富山県魚津市、石川県志賀町などで撮影した吉田監督「羊の木」の公開が控えている。各監督から、特に富山県内のロケーションオフィスの熱意と地元の協力に高い評価の声が聞かれたのは誇らしかった。

 

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