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北陸文化

【美術】カーディフ&ミラー展 金沢21美 知覚揺さぶる劇的空間

自作について語るジャネット・カーディフさん(右)とジョージ・ビュレス・ミラーさん

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 金沢21世紀美術館の企画展「ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラー」(来年3月11日まで)は、「世界中のキュレーターがラブコールを送り続けている」(黒沢浩美学芸課長)という二人のアジアでは初めての本格的な個展。島敦彦館長が「緻密かつ大胆、知的でクレージー、優雅で邪悪、ユーモアだけでなく恐怖も感じさせる」というその世界とは−。 (松岡等)

来年3月11日まで

 21美特有の独立した展示室ごとに、八つの物語が展開する。イタリア・ルネサンス期の画家がどんな環境で風景を描いたのかを再現した作品「アントネロとの対話」、カナダの片田舎でコレクションされたオペラのレコードを聴いていたのがどんな男だったのかを想像して作られた「小さな部屋のためのオペラ」、トレーラーハウスに眠る女性が見る夢を操り人形たちで表現した「マリオネット・メーカー」−。語られる物語は、ユーモラスでありながら時に悪魔的でさえある。

【上】古いキャンピングトレーラーを使った「マリオネット・メーカー」(2014年)【下】「マリオネット・メーカー」の内部には眠る女性。操り人形たちはその夢の世界なのか

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 ノスタルジックであり、どこか愚かしさも感じさせる世界。機械仕掛けの装置は細部まで作り込まれ、その動きに劇的な照明と音響がシンクロすることで物語がリアリティーを生む。人間とは、心の奥底にどこかゆがんだ奇妙さを抱えた存在なのではないか−。そう問いかけられているかのようでもある。

 そんな人間たちの社会は不条理と愚かさを抱え込んだ世界だ。現代の拷問がモチーフになった「キリング・マシン」。ミラーさんはカフカの短編小説「流刑地にて」に触発されたという。同時多発テロ、イラク戦争に続き、米国の捕虜刑務所での虐待がニュースになっていた。毛皮の椅子、二本のアームが奇妙な音と共に不気味に動く。一方で取り付けられたミラーボールの光は滑稽さを演出する。カーディフさんは「拷問や戦争をもエンターテインメント的に扱う考えを暗に揶揄(やゆ)したつもりだった」とカタログに記している。「人は恐怖や欲望が大好き。そして戦争とも無関係ではない」(島館長)。

現代の反ユートピア性を表現しているように見える「キリング・マシン」(2007年)=いずれも金沢21世紀美術館で

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 影響を受けた文学にカフカのほかベケットの不条理、ボルヘスのマジックリアリズム、SF作家フィリップ・K・ディック、村上春樹などを挙げた二人。ミラーさんは「文学を読み解くように作品に対峙(たいじ)してほしい」といい、最後にオーウェルの「1984年」を付け加えた。「だって今の世界はディストピアそのものじゃないか」

 ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラー カーディフは1957年、カナダ・オンタリオ州ブリュッセルズ生まれ。ミラーは60年、同・アルバータ州ベグレビル生まれ。美術大で出会った二人は95年から共同制作を始め、ブリティッシュコロンビア州グリンドロッドを拠点に活動。第49回ベネチア・ビエンナーレのカナダ館代表として特別賞。2001年に第4回ベネッセ賞。ドクメンタ13(2012年)など国際展にも多数参加。横浜トリエンナーレ(05年)、越後妻有アートトリエンナーレ(09年)、瀬戸内国際芸術祭(10年)、あいちトリエンナーレ2013などにも出品している。

 

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