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北陸文化

【映画】瀬長亀次郎のドキュメンタリー映画 佐古忠彦監督に聞く

映画「米軍が最も恐れた男その名は、カメジロー」について話す佐古忠彦監督=金沢市の香林坊東急スクエアで

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沖縄の「戦後」に目を

 米国占領下の沖縄で理不尽な弾圧に屈せず民衆から圧倒的な支持を集めた政治家・瀬長亀次郎の足跡を通し、沖縄と日本の戦後を問うドキュメンタリー映画「米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー」が十二月二日からシネモンド(金沢市)、ほとり座(富山市)で上映される。監督は「筑紫哲也のニュース23」のキャスターを務めたTBSの佐古忠彦さん(53)。金沢市でのインタビューで佐古さんは「瀬長を通して沖縄を見ることで日本の戦後が見えてくる」と話した。 (松岡等)

温度差埋めたい

 キャスター時代から度々、沖縄を取材してきた佐古さんが瀬長を取り上げたのは「沖縄の基地問題の全体像を伝え切れていないという思いがあった」という思いから。「本土の人の認識から沖縄の戦後史がすっぽり抜けている。そこに思いを致せば、沖縄と本土の、溝とか温度差と言われるものが埋まるきっかけになるのではないかと」

 瀬長はうるま新報(現・琉球新報)の社長に就いた後、四七年に沖縄人民党(後に日本共産党に合流)結成に参加。五四年に沖縄から退去命令を受けた人民党員をかくまったとして他の党員とともに逮捕され、弁護人なしの裁判で二年の懲役を受けた。

 しかしその「不屈」の信念と人柄から民衆からの支持は絶大。出所後の那覇市長時代には米軍出資の銀行から補助金や融資、預金の凍結という措置にあうが、瀬長を支持する市民の多くが自主納税する列を作り、市政運営の危機を逃れたほどだった。「沖縄で彼は伝説のヒーローのような存在。演説会の夜は家族が早く晩ご飯を食べて駆けつけた。沖縄の人々にとっては、それが初めての政治参加であり、そうした経験が今の沖縄の県民大会の原点にあるのではないか」と佐古さんはいう。

沖縄の民衆から絶大な支持を集めた瀬長亀次郎((C)TBS)

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希有なヒーロー

 映画の中で比屋根照夫・琉球大名誉教授が瀬長について「民衆の海を泳いでいた」と表現した。佐古さんも「民衆からの信頼の厚さは、政治家としても人物としても今では見当たらない希有(けう)な人ではないか」と。

 那覇市での先行上映では初日から長蛇の列ができた。その光景を佐古さんは忘れられないという。「上映後には『ありがとう』と言葉をかけられた。『沖縄が肯定された気がしました』『自分の人生を振り返るようだった』という人もいた。瀬長の演説会もきっと同じような雰囲気だったのでは」と。

     ◇

 瀬長を通して沖縄の戦後史を取り上げる意義を佐古さんはこう語る。

 「今、自由にものが言えなくなっているという指摘がある中で、これだけズバッとものを言って、民衆がついてくる。当時のアメリカという権力は、安定的に基地を運営できないという恐怖感が芽生えたら、あの手この手でいろんなことをやってくる。そこに立ち向かう一人の政治家と思いを託してついて行く民衆がいる。そういう部分が結果的に、(今の日本社会に)ささったのではないか」

 そして「戦後、平和憲法のもと民主主義が来て今につながっている本土と沖縄は全く逆。沖縄では来ると思っていた平和が来ない、日本の主権が回復すると同時に米軍が駐留した。それこそ『脱すべき』といわれる戦後レジームで、その状態が続いている。そこに目を向けることが、これからの私たちの国のありようを考えるきっかけになるのでは」と語る。

 昨年四月に放送したドキュメンタリー番組に再取材を加えて、再編集した。坂本龍一さんが書き下ろしの音楽を提供。ナレーションに大杉漣さん、山根基世さんが参加している。

 

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