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北陸文化

「体を動かす」原点演出 カナザワ・フリンジ 「新人Hソケリッサ!」/なかむらくるみさん

観光客でにぎわう金沢21世紀美術館でもダンスパフォーマンスを披露した「新人Hソケリッサ!」のメンバー=同美術館で

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 金沢21世紀美術館の企画「カナザワ・フリンジ」は、五組の国内外のアーティストが金沢に滞在して地元ディレクターと組んで二年間をかけて作品を制作するプロジェクト。社会や人との関係を探ろうとする作品が三〜五日に発表された。その中で、路上生活経験者によるダンス集団「新人Hソケリッサ!」と、金沢市のダンサーなかむらくるみさん(28)のパフォーマンスで見えたのは、純粋に身体表現を追究するアーティストだからこそ気づけた特徴ある体の動き。美しさとか華やかさとは遠く、どこかコミカルなのに、体の動きだけで見る人の心を揺さぶるのはなぜだろう。

 新人Hソケリッサ!は、東京を拠点に十年間にわたり活動してきた。代表のダンサー・振付師のアオキ裕キさんは、元々はアイドルやCMの振付なども行っていた。ニューヨークで勉強中に米同時多発テロに遭遇したのをきっかけに身体表現について問い直す中で、東京の路上でストリートミュージシャンに人が群がる横で寝転ぶホームレスのおじさんが目についた。

 「誰も見向きもしなかったが、その時に路上生活を経験した彼らが踊る姿を見たいと思った。普通に生活する現代人が失った、朝日とともに起き日暮れとともに眠るといった原始人に通じる身体の動きがあるのではと直感した」

 滑稽でユーモラスにも見える踊りは一見、即興のようでもあるが、すべてアオキさんの振付による。今回は金沢市の浅野川のほとりにある民家に滞在し、「あさのがわのいえ」と題したパフォーマンスを創作。「異人」でもある彼らが持つ霊性を演出した。観光客でにぎわう21美でのゲリラ的なパフォーマンスでは、「美術を楽しむ」といった常識に、違和感を突きつけているようでもあった。

    ◇

 日常的に金沢市内の十カ所の福祉施設などでダンスやヨガを教えるなかむらさんも、いわゆる「障害のある人たち」の特徴のある人の体の動きそのものに魅了されるという。

 もともとコンテンポラリーダンスの舞台を志して十八歳で渡英し、二年を過ごしたが、「大きなけがをして帰国した時、何のために踊っているのかという葛藤が生まれた。華やかな舞台を目指して踊っている人はたくさんいるし、自分が持っているものを地元でシェアしたいと考えた」

 金沢でダンスユニット「100(いまるまる)」として活動する一方、ホームヘルパーの資格も取り、施設で利用者に体を動かす講座などを行う。「ダンサーで振付をするけれど、彼らには自分には生み出し得ないような動きがあってひきつけられる。不随意運動はハンディかもしれないが、とてもインスピレーションを受ける」

 障害のある人とともに一般の人に向けてパフォーマンスを行うのはなかむらさんにも初めて。市内のアートスペースKapoでのパフォーマンスでは「味わう」というキーワードで見る側から先入観を取り払う仕掛けをした。出演した人が純粋に何かをやって見せたいという心情が、身体の特徴や歌と一緒になってユニークさやおかしみを生み、見ている人の笑いを誘い、その懸命さがじんわりと心を動かした。

  (松岡等)

 

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