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北陸文化【能楽おもしろ鑑賞法】12 能「遊行柳」 弱さ謡われても舞に強さ
能では、場面を描く謡とシテの姿や動きが一致しないことがある。だが違和感はない。そんな不思議を金沢能楽会の十二月定例能で上演される『遊行柳(ゆぎょうやなぎ)』で体感してみよう。 粗筋はこうだ。遊行上人(ワキ)が、仏法を広める旅で東北・白河に差し掛かる。分かれ道で思案していると老人(前シテ)が現れ、朽木の柳という名木がある古道へ案内する。西行とのゆかりなどを教え、姿を消す老人。 上人が供養すると、白髪を乱した柳の精(後シテ)が出現。柳の徳を数々示した後、御法(みのり)への報謝の心で静かに舞うのだった。 二十年余前、観世流の異才が老女能『檜垣(ひがき)』で、脚をわなわなさせて登場したのを見た。百歳にも及ぶ女の役ではあるが、老醜が前面に出てしまう。見た目の写実を捨て内面を引き出すのが能ではないのか。 能『百万』では子をなくした母を謡は「長き黒髪をおどろのごとく乱し」「眉根黒き乱れ墨」「麻衣、肩を結んで裾に下げ、裾を結びて肩に掛くる」と描くが、舞台の姿は端正でりりしい。そのため、母の一途な気持ちが伝わってくる。 「遊行柳」も柳の精の姿を「気力無うして弱々と立ち舞う」「足元もよろよろ弱々と倒れ伏し」と謡う。だが、シテの舞からは強さを感じるだろう。それは仏法への思いか、生への執着か。 (笛) ◇十二月定例能番組(12月3日後1時、石川県立能楽堂) ▽能「遊行柳」(シテ佐野由於) ▽狂言「茶壺」(シテ能村祐丞) ▽仕舞「邯鄲」(シテ渡辺荀之助) ▽能「舎利」(シテ藪克徳) ▽入場料=一般2500円(当日3000円)学生1000円、中学生以下無料(問)同能楽堂076(264)2598 PR情報
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