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北陸文化

【工芸】若手15人 作風多彩 富山市佐藤記念美術館

九谷焼の作家としてそれぞれの思いを語る、左から山近泰さん、牟田陽日さん、見附正康さん=富山市佐藤記念美術館で

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 九谷焼の最大の特色は多様な色絵表現。その伝統を受け継ぎながら新たな表現に挑む現代九谷を代表する若手作家15人の作品を集めた展覧会「現代九谷焼の旗手たち」が富山市佐藤記念美術館で開かれている。富山県内の美術館で九谷焼だけの展示はまれだというだけでなく、切磋琢磨(せっさたくま)する若手作家たちの現在をまとめて見ることで、九谷焼の将来を展望する機会にもなっている。 (松岡等)

現代九谷焼の旗手たち

 出品作家は出発点や目指す所もさまざま、同じ九谷焼の技法でありながら個性的な作品ばかりで、あらためて九谷焼の自由度の幅を感じさせる。一方で多くの作家が、石川県立九谷焼技術研修所で学んでいる点も見逃せない。産地としての技術伝承が新たな作家を生んでいる。

紋紗織、截金ガラスと九谷焼赤絵細描がコラボした赤絵細描金硝子香合「緋の襲(あけのかさね)」。身の部分を見附正康さんが制作した。香合は高さ2・8センチ、直径8センチ=ギャラリーNOW提供

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分野超えコラボ

 出品作家で、先月二十八日にあったトークイベントに参加した三人もそれぞれにユニークな活動を展開する。見附正康さん(石川県加賀市)は、赤絵細描の第一人者である福島武山さんに師事した後に独立し、金沢21世紀美術館で開かれた「工芸未来派」に出品して現代美術の世界からも注目を集めた人気作家だ。

 富山市のギャラリーで開かれている企画展「響き合う美」(五日まで)で見附さんは、染織作家で紋紗の人間国宝・土屋順紀さん(岐阜県関市)、失われようとしていた截金(きりかね)の技法を生かした「截金ガラス」という分野を切り開いて高い評価を集める山本茜さん(金沢市出身、京都市)との共同制作品を発表。伝統の超絶技巧と幾何学的な紋様にこだわりながら、他分野とのコラボレーションで可能性の広がりをも示した。

 「基本的に細かいものを描いていて一日中楽しい人間」という一方で「美と気品を求めていきたい。山本さんと同じ思いで、最後は細かい模様で人をはっとさせる作品を描きたい」と今後を見据える。

圧倒的な絵画力

 石川県以外から九谷焼の世界に飛び込み作家となった人も少なくない。東京都出身で、ロンドン大学ゴールドスミスカレッジで現代美術を学んだ経歴のある牟田陽日(むたようか)さん(石川県能美市)もその一人。神話や伝説上の生きものや動物を題材に、独特の造形と圧倒的な絵画力で、工芸とアートの境を軽々と行き来する。

【上】牟田陽日さん「百花獏壇」高さ38センチ、幅61センチ、奥行き29センチ【下】山近泰さん「霊獣犀の絵」高さ10センチ、幅52センチ、奥行き28・5センチ=ともに「伝統と創造−現代九谷焼の旗手たち」展図録から

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 出品した新作「百花獏壇」の鮮やかさはこれまでの九谷焼の概念を覆そうとするかのよう。「九谷焼という工芸を素材にしたアート」「やりたいことが多すぎて」といい、「九谷焼の世界は度量が大きい。研修所ではさまざまな技法を惜しげもなく教えてくれるし、多様性もある」と話した。

色の追究に意欲

 トークに参加したうち、最もオーソドックスな九谷焼の色絵の流れにあるように見えるのが山近泰さん(同県野々市市)。ゾウやサイなどの動物をモチーフに伝統の色絵を深化させようと模索し、「今の色に満足していない。追究したい」と語る。動物の描写も「リアルにというより、頭でかみ砕いたうえで描く。これから五十歳、六十歳のサイを描ける作家になりたい」と、作家としての表現の追究に意欲的だ。

 三人以外にも、出品作家たちはそれぞれに個性豊かで、見どころは多い。企画した同美術館の川上貴裕・主任学芸員は「陶工の数だけ作風があるというくらいの多様性が伝統的な特徴。外からのものに柔軟であり、技術を共有する自由な気風、風土が九谷には根付いている」と、あらためて産地としての層の厚みを強調した。

 ◆「現代九谷焼の旗手たち」の出品作家 赤地径(金沢市)、井上雅子(能美市)、上出恵悟(同)、上端伸也(金沢市)、北村和義(小松市)、斎藤まゆ(金沢市)、柴田有希佳(能美市)、多田幸史(野々市市)、中田雅巳(川北町)、三浦晃禎(能美市)、見附正康(加賀市)、南絢子(能美市)、宮本雅夫(小松市)、牟田陽日(能美市)、山近泰(野々市市)

 

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