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北陸文化

【奥能登国際芸術祭 スズ2017】中 海と山の記憶

(1)角文平「Silhouett Factory」=石川県珠洲市の本江寺倉庫で

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 奥能登国際芸術祭が開かれている珠洲市は里海里山の資源の宝庫。海路が人々の暮らしを支えた。アーティストたちは、豊かな海、山とともにあった生活の記憶を住民とともに作品化している。=敬称略(松岡等)

物語 紡いで

 金工作品で知られる角文平(一九七八年福井県生まれ)が会場にしたのは海岸に面した旧瓦工場。扉の向こうは海。かつて瓦は海から運び出されていた。

 「Silhouett Factory」(写真(1))の内部は、能登地方で冬場の風よけに使う間垣を黒の塗料で塗り、映画館の中に入ったように暗い。海砂を敷き詰めた上に伸びる桟橋をイメージした板で海を望むと、正面に海と空。それを背景に、珠洲の特産物や祭り、伝承などをモチーフにした金属板による精緻な切り絵が揺れる。潮騒をバックに影が揺れるたびに、珠洲の物語が紡がれる。

     ◇

(2)さわひらき「魚話」

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 三方を海で囲まれた珠洲の主要な交通路は海路だった。独特の映像が非日常的な時間感覚を呼び起こすさわひらき(一九七七年金沢市生まれ、ロンドン在住)は、祖母から聞いた氷を舟で運ぶ話をもとに、映像インスタレーション作品「魚話」(写真(2))を制作した。戦時中、警察官として珠洲に赴任していた祖父が病気で倒れた時、金沢の実家の氷店から七尾までは陸路で、そこから珠洲までは舟で氷を運んだ。二つのスクリーンでシンクロしながら進む八分三十秒の映像、氷を運んだことを思わせる舟、アニメーションのインスタレーションなどでつくり出された幻夢的な空間。そこでは祖母の記憶とさわの想像による、夢のような不思議な時間が流れる。

     ◇

(3)田中信行「触生−原初」

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 奥能登は漆の聖地とも言える場所。近隣の輪島市の輪島塗はもちろん、珠洲でも漆が採取されてきた。漆の特性を追求し独自の漆造形を生み出す田中信行(一九五九年東京都生まれ、金沢市在住)は、何層も重ね、磨くことで底つやを生む伝統的な乾漆の技法を使った作品「触生−原初」(写真(3))を出品した。会場は明治時代に作られ、持ち主が取り壊すつもりでいたという蔵。田中は通常のギャラリーなどとは異なる見え方をする会場について「時間が違う」と語る。

住民と“共作”

(4)村尾かずこ「サザエハウス」

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 住民が制作に参加するのも芸術祭。二級左官技能士の資格も持つ村尾かずこ(一九六五年東京都生まれ)の作品「サザエハウス」(写真(4))の制作に、七〜八月にかけ毎日数人が参加した。海辺にあった倉庫の外壁に珠洲の特産であるサザエの貝殻二万個がしっくいで張り付けられた。内部はらせん状のサザエを思わせる滑らかで白い壁。内部の小窓からは海を望める。「父子の左官屋さんが興味を持ってくれて助かったし、小学校六年生の男の子は一週間以上来てくれた。ここでしかできない作品」と村尾。

     ◇

(5)キジマ真紀「海と山のスズびらき」

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 参加型ワークショップを通じた作品制作を続けるキジマ真紀(一九七六年東京都生まれ)は、日置地区の住民たちが描いた海と山の記憶の絵をパッチワークで百二十枚の旗にした作品「海と山のスズびらき」(写真(5))を住民とともに作った。六〜八月に行われたワークショップには地域の小学一年生から九十歳の女性まで約五十人が参加した。祭や海の情景、農作業など、住民自身が見つけた珠洲の魅力が力強く表現されている。

        

 

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