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北陸文化

【能楽おもしろ鑑賞法】10 能「阿漕」 漁師の業と小道具の効果

小さな四つ手網を使い密漁を演ずる能「阿漕」の後シテ=2009年9月13日、石川県立能楽堂で

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 能が大成した時代には、漁業や狩猟などで生き物の命を取る人は罪深いと考えられていたらしい。それをテーマにした能の一つ「阿漕(あこぎ)」が、金沢能楽会の十月定例能で上演される。

 旅の僧(ワキ)の前に釣りざおを肩にした老人(前シテ)が現れ、殺生の家に生まれた悲しさを語る。ここは阿漕が浦(今の三重県)。伊勢神宮へ魚を奉納するための漁場で一般の漁は禁止だった。

 僧に促され、ここが阿漕と呼ばれる訳を語る老人。この浦は魚が多く、密漁を続けた男がいた。それが阿漕。ついに発覚して仲間の漁師に海へ沈められる。「こはそもいかに」と叫ぶ男。迫真の語りに、この老人こそ阿漕の霊だと僧は悟る。

 読経で阿漕の霊が本来の姿で現れ(後シテ)、密漁のスリルや落ちた地獄の責め苦を、身振りを交えて語る。最後に「罪とがを助けたまえ」と声を振り絞り、波の底に沈んで行った。

 注目したいのは、海での処刑や地獄の責め苦の表現が類似曲に比べ生々しくないこと。阿漕のいわれが実は、出家前の西行(佐藤憲清)の失恋にまつわる和歌のせい(謡もこれに触れる)だろうか。

 小道具にもご注目。前シテは、糸のからめ方で釣りざおを網のように見せる。後シテは小さい四つ手網で漁を再現する。いずれもある場面でパッと捨てる。その効果はいかに? こんな鑑賞法もお試しあれ。 (笛)

◇十月定例能番組(10月1日午後1時、石川県立能楽堂)

 ▽能「半蔀」(シテ渡辺荀之助)

 ▽狂言「謀生種(ほうじょうのたね)」(シテ若生敏郎)

 ▽仕舞「経政クセ」(シテ佐野由於)

 ▽能「阿漕」(シテ高橋憲正)

▽入場料=一般2500円(当日3000円)学生1000円、中学生以下無料(問)同能楽堂076(264)2598

 

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