トップ > 北陸中日新聞から > 北陸文化 > 記事一覧 > 9月の記事一覧 > 記事

ここから本文

北陸文化

【映画】「彼女の人生は間違いじゃない」 ヒロインを熱演 瀧内公美さん(富山県出身)

「俳優として以上に人間として成長させてもらった作品」と語る瀧内公美さん=富山市内で

写真

 東日本大震災後の福島に生きる人々の葛藤を描く広木隆一監督の映画「彼女の人生は間違いじゃない」(R15指定)が公開中だ。市役所に勤めながら週末は東京・渋谷のデリヘル嬢として働く主人公のみゆき。震災後の福島の日常を覆う重苦しい空気、そこに行き、もがきながら再生へと向かおうとする希望が胸に迫る。熱演した富山県出身の瀧内公美さんは「俳優として以上に人間として成長させてもらった。誰に何を言われても、自分の選択した生き方は間違いじゃないと、勇気づけてくれる作品。多くの人に見てほしい」と語る。 (松岡等)

自分の選択した生き方 間違いじゃないと勇気

 みゆきは台所と二間だけの狭い仮設住宅で父親と二人暮らし。母を津波で失い、汚染で農地を失った父親(光石研さん)のパチンコ通いにいら立つ。何げないひと言から恋人(篠原篤さん)とも疎遠になっていた。週末ごとに早朝の高速バスで東京に通いデリヘルで働くようになったのは、渋谷で三浦(高良健吾さん)にスカウトされたのがきっかけだった−。原作は「ヴァイブレータ」「さよなら歌舞伎町」などの広木監督が、震災後に書いた自身初の同名小説だ。

 ◇ ■ ◇

 瀧内さんはオーディションで、複雑な心情をせりふ以上にたたずまいや表情で表現する難しいみゆきの役をつかんだ。「脚本、原作がすごいと思った。自分の存在を裸でかけるのが一番やってみたかったこと。この脚本を手放したら出会えないだろうと思った」

 震災を描いたドキュメンタリー作品を見るだけでなく、図書館にこもって震災の少し前からの福島県の地方紙を読んだ。福島の仮設住宅での取材では、「皆さん明るく、元気。震災当時のこと、初めて聞く人にとっては驚くようなことも話す流れが普通で。ただ話が終わった時に残る余韻に、そこに生きている人の思いを感じた」

 東京ではデリヘルで働く女性にも話を聞いた。「脚本にあった生々しさをリアルにやりたかったし、利用している男性に『こんなんじゃないよ』って言われたくなかったから。女の子たちには自分で選択してそこにいるという意思の強さがあった」と。

 震災を描く難しい役柄にプレッシャーは相当だったと想像する。「監督は納得いくまで五十回、六十回平気で回すので、体力的にはきつかった。仮設住宅の周りを歩くのでも、『他人の家に来てるんじゃないんだからさ』と。ほんとにそこで生きているようにやらないとOKが出ない。やっと、ぼそっとひと言もらって。けれど自分のために時間を粘ってくれ、それが厳しいか優しいかと言ったら、それは優しいと思う。映画に対して真摯(しんし)に向き合っている姿だなって思えたし、そうまでしてくれる監督に今まで出会ったことがなかったから」

 ◇ ■ ◇

 「広木組はいつも同じスタッフ。寺島しのぶさんの名前とか出されると、それは技術も表現も比べものにならない。そういう時はつらかった。自分は何者だろうかと」。瀧内さんがやせていくのが画面にも映し出されている。「監督には『デニーロですか』って笑われた」。自らを追い込む姿が、不安や悩みを抱えるみゆきとオーバーラップする。

 人から見ればなぜ? という行いが、当人には生きるためにどうしても通過しなくてはならない切実なものである時がある。みゆきにはそれが週末に東京に行くことだったのかもしれない。「自分を肯定してくれ、何も求めずにいてくれる三浦に会いに行くことだったんだと思う。そういう人がいて、彼女の人生がつながったのだと」

 ◇ ■ ◇

 行き帰りのバスでの、どこかうつろな表情が印象的だ。「最後は帰る場所、それが福島であることが大切だと思った。地元であり、居場所であることでみゆきは決意を固められたのでは」

 市役所の同僚・新田(柄本時生さん)や父親もまた葛藤の中で一歩を踏み出す。震災から七年目。風化も言われる中でも人々は生きている。昨年の撮影後、瀧内さんが話を聞いた仮設住宅は今年三月に撤去された。「震災も身近なこと。いつ富山や石川で起きてもおかしくないと感じてほしい」と瀧内さん。「その中で、自分の選択した生き方は、他人に何を言われようが肯定される。そう勇気づけてくれる作品になったと思う」

     ◇

 上映中の金沢市のシネモンドは八日まで。富山市のJMAX THEATERとやまでは二十三日から十月六日まで上映。

 たきうち・くみ 1989年、富山県出身。「グレイトフルデッド」(2014年、内田英治監督)で映画初主演。ほかに「日本で一番悪い奴ら」(16年、白石和弥監督)気鋭の監督によるオムニバスムービー「ブルーハーツが聴こえる」の「人にやさしく」(下山天監督)などに出演。NHKドラマ「美女と男子」などテレビやCM、舞台などでも活躍。

 

この記事を印刷する

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索