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北陸文化

【美術】富山県美術館 きょう全面開館

 富山市木場町の富岩運河環水公園内で二十六日に全面開館する富山県美術館。新たに収蔵した藤田嗣治の「二人の裸婦」(一九二九年)がお披露目される。開館記念企画展「生命と美の物語 LIFE−楽園をもとめて」(前期十月三日まで。後期十月五日〜十一月五日)では、国内外の美術館から借り受けた印象派から現代美術までの名品が並ぶ。

 「LIFE」展は百七十点の作品を「子ども」「愛」「日常」「感情」「夢」「死」「プリミティブ」「自然」の八章で紹介。ルノワールなどの印象派からクリムト、シーレなどのウイーン世紀末美術、ピカソ、シャガール、ゴーガンなど二十世紀を代表する西洋近代、青木繁、靉光(あいみつ)など日本の近代の絵画が見られる。

 藤田作品は全面開館の目玉として県が二億千六百万円で購入。これに併せてともに藤田の「座る裸婦」(伊勢彦信さん・イセ文化財団代表理事所蔵、一九三〇年代)、「猫」(富山県出身で女優の室井滋さん所蔵、一九三二年)も展示する。 (松岡等)

全面開館する美術館のシンボルにもなっているクマの野外彫刻の前で「県民の期待の大きさを感じる」と語る雪山行二館長=富山市木場町の富山県美術館で

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雪山行二館長に聞く

美術館を生活の一部に

 富山県美術館はどんな美術館になるのか。全面開館にあたり、雪山行二(ゆきやまこうじ)館長に語ってもらった。

 ◇

 これまでの美術館は価値の決まった美術品、価値の定まった美術史を知ってもらう、教えてあげるという啓蒙(けいもう)的な立場だったが、社会の変化とともにずいぶん変わった。二十世紀を中心とした富山県立近代美術館のコレクションは、地方の公立館としてユニークで優れたものだが、教科書通りに並ぶ美術品をもう一度、場合によっては白紙に戻し、今の視点でとらえ直す必要があると考えた。

 この三十年で美術は大きく変わり、絵画、彫刻といったジャンルも崩れた。参加型美術があり、インスタレーションや映像作品が力を持っている。美術家の役割も生活に結びついたものに変わってきている。

【左】グスタフ・クリムト《人生は戦いなり(黄金の騎士)》1903年/愛知県美術館蔵【右】パウル・クレー《子供と伯母》1937年/徳島県立近代美術館蔵

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 どういう方向がいいか考えた時、環水公園にある場所の力を生かすのが重要だった。家族連れや若いカップルが数多く訪れる公園と一体化し、境のない美術館。今の時代に地方で新しい美術館を作るというのは大変なことで、将来、県民のお荷物にしてはならない。県民、市民、美術愛好家の生活の一部になることを目指した。

 移転した場所に元々あって人気だった「ふわふわドーム」を子どもたちから奪ってしまうことが課題だったが、デザイナーの佐藤卓さんの「『ふわふわ』は擬態語。ならばちなんだ遊具を作ればどうか」というアイデアで「オノマトペの屋上」になった。

 もう一つは、富山近美の三十五年の成果を受け継ぎながら、鑑賞するだけでなく、見た人が何か自分も作ってやろうというようになる美術館にすること。これまでも美術館教育には先進的に取り組んできたが、さらに力を入れる。三階の一番いい場所に置いたアトリエは、いつでも何かができるような場所にしたい。

 富山近美では世界ポスタートリエンナーレを十一回開き、一万三千枚のコレクションがある。データベース化し、タッチパネルで触れると見られるようにした。既に子供から年配まで楽しんでくれている。

青木繁《大穴牟知命》1905年/石橋財団ブリヂストン美術館蔵

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 富山市出身の美術批評家、美術作家でもあった滝口修造の部屋も作った。これまで以上にきちんと見せたい。晩年を立山山麓で過ごしたバイオリニストのシモン・ゴールドベルクさんのコレクションも寄贈を受けており、小さい部屋だが紹介し、音楽イベントなどもやりたい。

 開館記念展は間口を広げ全国の美術館から借り受けた作品を見せる。富山近美がこれまで多くの収蔵作品を貸し出してきたおかげで、お返しに各地から質の高い作品が集まった。

 次回の企画展から特色を出す。二回目はデザインを掘り下げ、次は教育。来年の春は佐藤卓さんの「デザインあ」展。それで新美術館の方向性が見えると思う。

 美術館は今、入場者数で評価される時代だが、本来の使命はそこにはないはず。美術館自身が役割を自覚しなくては。美術館が生き残るためにも、高度なサービスの提供が不可欠で、そのために学芸員らスタッフがしっかり調査・研究をできる体制も整えたい。

 

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