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北陸文化

【コミュニティシネマ 街中銀幕から】 「美しい星」の上映と動画配信

 二十六日から二週間、『美しい星』を上映する。『桐島、部活やめるってよ』『紙の月』などの作品を手がけた吉田大八監督作品。三島由紀夫が冷戦下の核の危機に警鐘を鳴らした異色のSF小説を原作に、舞台を現代へとアレンジし、環境問題と家族の絆を吉田監督らしい笑いを混ぜ込んで描く。

 予報が当たらないお天気キャスターの父と野心あふれるフリーターの息子、美人すぎて周りから浮いてしまう大学生の娘、心に空虚を抱える主婦である母。そんな一家がある日突然、それぞれ火星人、水星人、金星人、地球人であることを悟り、地球を救う使命を託される。彼らは奮闘を重ねるが、やがて世間を巻き込み傷ついていく。そんな家族の前にある男が現れ、地球は救う価値があるのかと問いかける。

 主演のリリー・フランキーはじめ亀梨和也、橋本愛、中嶋朋子、佐々木蔵之介ら豪華キャスト。金沢駅や長町武家屋敷や白尾海岸、そして三島由紀夫と縁のある料亭「つば甚」などが撮影に使われている。原作には香林坊の雑踏や兼六園、尾山神社なども登場する。

 石川県にゆかりの深い作品だが、六月時点で郊外の映画館での上映しか予定されておらず、年配の方などで交通手段の限られている方が見ることができなかったのでは、というようなことをこの欄に書いたところ、遅くなってもよいから上映してほしいというはがきをいただいた。街中にあるシネモンドでの『美しい星』の再上映が採算の取れるものだろうと思い、再上映を決定した。

 大作や話題作は別として、ちょっと気になる映画を観に映画館へ行くことのハードルを上げている一因に、有料の動画配信サービスが挙げられる。遠くまで決められた時間に行かなくても、定額料金で対象作品が見放題で、新作も次々と配信されていく。さらに一部の動画配信サービスの出資で、映画や連続ドラマ、アニメなどの制作も始まっている。

 つまり、作品を制作して見ることができる環境の提供までの映画が観客のもとに届くまでの全てを、動画配信サービスが扱う。国内外で実力がありながらも興行的に採算が取れず、なかなか仕事が入らない中堅どころの映画監督などには作品を作る新しいチャンスだ。

 今まで全国一斉公開はされなくとも実力のある監督たちの作品がミニシアターのプログラムを支えてきた。今後は動画配信されてしまうので、映画館に回ってくる作品が減っていくだろうと予想される。映画館の存在意義をますます考えていかねばならない。 (シネモンド支配人・上野克)

 

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