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北陸文化

【能楽おもしろ鑑賞法】9 能「項羽」 中国の敗将の生きざま

能「項羽」の前場。草刈り男(右)も美人草を受ける老船頭も和服=2009年11月1日、石川県立能楽堂で

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 能には中国を舞台にした作品もある。そんな一つ「項羽」が金沢能楽会の九月定例能で上演される。

 漢の高祖となる劉邦のライバル、楚の項羽が主人公。両者の物語は、能が大成した室町時代に『太平記』の「漢楚戦いの事」で広く親しまれていたらしい。困った事に、この能は見る側の予備知識を前提にしている。

 物語は草刈りの男(ワキ)が老船頭(前シテ)の船に乗せてもらい、船賃として美人草を渡す事で始まる。場所は中国安徽省の烏江周辺。項羽が敵軍の前で自害した所だ。

 しかし登場人物は和服。萩が咲き乱れる情景は、日本の秋そのものである。この後に描かれるのは、項羽と愛妾(あいしょう)虞美人の悲惨な最期。物寂しい季節感を和風前菜として出したのだろうか。

 老船頭は美人草のいわれを教え、項羽の最期を語る。「詳しい事は知ってるよね」と超ダイジェスト版。『太平記』や原典である『史記』との違いもある。「わが首をとって高祖に奉り、名を揚げよ」と呂馬童に呼びかける場面がやや唐突に始まる。『太平記』には、漢軍の中に長年の朋友(ほうゆう)だった呂馬童を見つけたとある。これも「知ってるよね」か。

 老船頭は「われこそ項羽が幽霊」と明かし、草刈り男たちの読経に誘われ、虞美人(ツレ)を伴って中国風の武将姿(後シテ)で再登場する。高楼から飛び降りる虞、大軍に怒り狂ったように挑む項羽。源平の武将と趣が異なる敗将の生きざまを、能の表現で味わってみよう。 (笛)

◇九月定例能番組(9月3日後1時、石川県立能楽堂)

 ▽能「龍田」(シテ島村明宏)

 ▽狂言「昆布売」(シテ鍋島憲)

 ▽仕舞「松風」(シテ松田若子)

 ▽能「項羽」(シテ高橋右任)

 ▽入場料=一般2500円(当日3000円)学生1000円、中学生以下無料。(問)同能楽堂076(264)2598

 

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