トップ > 北陸中日新聞から > 北陸文化 > 記事一覧 > 7月の記事一覧 > 記事

ここから本文

北陸文化

政治と性読み解く試み 金沢21美「自治区」シリーズ4回目

共同プロジェクトについて語るタイの作家ウティット・ヘーマムーンさん(左から2人目)と演劇作家の岡田利規さん(右から2人目)=金沢21世紀美術館で

写真

タイの作家 × 演劇作家・小説家

ウティット・ヘーマムーンさん×岡田利規さん

 現代タイを代表する作家ウティット・ヘーマムーンさんと演劇作家、小説家の岡田利規さんが先月、金沢21世紀美術館で対談した。ウティットさんの新作小説を岡田さんが二〇一八年に舞台化するプロジェクトが進行中の二人。「国民国家と芸術−タイについて考える」をテーマに語り合った。

 ウティットさんは一九七五年、タイ中央部のケンコーイ生まれ。バンコクのシラパコーン芸術大を卒業後、二〇〇九年に三作目の長編小説「ラップレー、ケンコーイ」で作家としての地位を確立。東南アジア文学賞などを受賞した。一三年には京都市立芸術大ギャラリーでワークショップにタイを代表する映画監督アピチャッポン・ウィーラセタクンとともに参加し、中編「残り香を秘めた京都」も発表している。

 岡田さんは従来の演劇の概念を覆す劇作家として注目され、〇五年に「三月の5日間」で岸田国士戯曲賞。デビュー小説集「わたしたちに許された特別な時間の終わり」で大江健三郎賞。国内外で幅広く活動し、21美でも子供向けの「わかったさんのクッキー」などを展開。一六年からドイツの公立劇場ミュンヘン・カンマーシュピーレでレパートリー作品の演出を三シーズンにわたり務める。

 今回、舞台化される小説はタイの現代史と主人公のアーティストの性遍歴が重ね合わされながら進む物語。岡田さんは、国だけでなく性的にも境界線や輪郭といったことがテーマになるといい、舞台と客席の境界をあいまいにするギャラリーのような場所での上演を構想。リサーチではウティットさんとともにバンコク市内を歩いた。

 ウティットさんは「この二〇年の中で三度あった政治的な流血事件の現場を歩き、何かを感じてもらいたかった。小説の中で性のことと政治のことを書いているが、共通しているのは強制、無理強いされたものだということ」と語る。これに「タイと日本で共通するのは閉塞(へいそく)感や諦めのような気持ち。倦怠(けんたい)感といってもいいと思うが、それは性的なものとかかわっている」と応じた岡田さん。「プロジェクトでは心の問題として、国を考えることをやりたい」と、タイを通じて帰属する国というものを心の問題として読み解く試みに意欲をみせた。

     ◇

 対談は同美術館が本年度から始めた美術に限らないライブや映像上映、トーク、滞在制作など、実験的な試みを展開する「自治区」シリーズの第四回目。

 次回は二十二日午後一時から、中国の美術作家チウ・ジージエ(邱志傑)さんをゲストにトークがある。開催中のベネチア・ビエンナーレで中国館のディレクターを務めたジージエさんが「歴史的事件によって作られる個人」をテーマに語る。入場無料。 (松岡等)

 

この記事を印刷する

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索