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北陸文化

【映画】米林宏昌監督「メアリと魔女の花」 スタジオポノック初長編

映画「メアリと魔女の花」について語る米林宏昌監督=石川県野々市市で

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魔法って何だろう?

 新作のアニメーション映画「メアリと魔女の花」が八日から全国公開になる石川県野々市市出身の米林宏昌監督(43)。二十年にわたり活動したスタジオジブリを離れ、盟友の西村義明プロデューサーと立ち上げたスタジオポノックの初長編作品となる。魔女といえば誰もが宮崎駿監督の名作「魔女の宅急便」を思い浮かべるが、テーマは「魔法を失った普通の少女が何をできるか」。作品にジブリという「魔法」から一歩踏み出した自らを重ねる米林監督に聞いた。 (松岡等)

主人公の「変身」

 なぜ魔女の話を。

 前作の「思い出のマーニー」が心の内面を描くとても静かな作品だったので、次は喜怒哀楽のある主人公で、動きのあるファンタジー作品にしたいと思っていた。いろいろ探す中で西村さんが探してきた原作。僕は最初、「魔女かあ」と。宮崎監督の「魔女の宅急便」と比べられるのは必至だとちょっと身構えた。

 でも、アクション性のあるアニメーションに向いているし、自然も描ける。何より宮崎作品はスランプで魔法を失う魔女の女の子の物語だけど、こちらは普通の女の子が偶然手にする魔法の力から騒動に巻き込まれて、肝心な時に魔法を失って何ができるかという話。これは人間の物語であり、全然違う話にできるのではと思えた。

 とは言え、宮崎作品は意識したのでは。

 箒(ほうき)であるとか、黒猫であるとか似たようなモチーフはある。「魔女の宅急便」で黒猫は主人公キキの心の声を表していたが、本作ではミステリアスな架け橋のような存在。箒も「宅急便」では道具だったけれど、今回は一緒に冒険する仲間みたいな存在に描けないかとか、そういう差別化を考えた。

 ただ、二十年間ジブリで過ごし培ってきたものはあるし、志や精神みたいなものは染み付いている。それは出てくるだろうとは思っていた。

 過去二作に続いてイギリスの児童文学が原作。ロケハンにも行った。

 それは偶然。ただイギリスの児童文学は大人が読めるようなテーマが込められているものが多い。今回は原作にさらにもう一つテーマ性がほしくて、「変身」というテーマを加えた。主人公メアリの成長という意味での変身や、マダム・マンブルチュークやドクター・デイがやろうとした壮大な「変身実験」の問題。これがかみ合えばおもしろいと思っていた。

僕らも踏み出した

 「魔法はいらない」というせりふが作品のハイライト。どんなメッセージを込めたのか。

 最初に魔法って何だろうと考えた。今の時代、目に見えない魔法がある。例えば、ボタンをポチッと押せば品物が届いたりするのも魔法だろうし、信頼とか信用といったものも魔法と言える。この数年、ものの価値観がすごく変わって、これまで信用し、信頼してきたものが急に失われるということを目の当たりにすることもある。

 自分たちはスタジオジブリを去って新しい第一歩を踏み出したけど、僕らにとってジブリが魔法だったんじゃないかと。そういうものを失った時に勇気を持って立ち上がって前に進めるように描けないか、そうしたことをテーマとして描けるのであれば、現代の魔女の物語になるのではないかと思った。

 ジブリを去った自らを重ねる作品を完成させて思うことは。

 ジブリには宮崎監督の作品をつくるために集まったスタッフがいたわけで、僕自身も二作つくらせてもらった。今回は人を集め、スタジオを構えるところから始まっているので、苦労はたくさんあった。ただ妥協はしたくないし、ジブリのクオリティーも求められる。幸いにもジブリで一緒にやった仲間が集まってくれ、新しい人も加わってなんとか完成できた。そうやってできた作品を届けられるのはうれしい。

 新しい挑戦ということでエネルギッシュでありたかったし、躍動感のあるものを描きたいと思っていた。ジブリの要素が盛り込まれているのは、みんなこれまでつくってきたのだから当然で、ジブリを去っても、その影響は色濃くあるんだと改めて感じた。ジブリでつくってきたものが下敷きにあっての作品。そういう意味で、エンドロールに宮崎駿、高畑勲、鈴木敏夫のお三方に感謝を込めた。

 「メアリと魔女の花」 英国の女流作家メアリー・スチュアート初の児童書が原作。赤毛でそばかす、快活な少女メアリが森で禁断の花「夜間飛行」を見つけ、奇想天外な魔法の世界の冒険に巻き込まれる物語。主人公メアリの声を杉咲花が好演。ほかに神木隆之介、天海祐希、小日向文世、満島ひかり、佐藤二朗、遠藤憲一、渡辺えり、大竹しのぶら豪華な俳優陣が出演。主題歌はSEKAI NO OWARIが手掛ける。

 よねばやし・ひろまさ 1973年石川県野々市町(現野々市市)生まれ。金沢美術工芸大在学中、北陸中日新聞のCMなどでアニメーションを制作。大学を中退し、96年にスタジオジブリに入社。「もののけ姫」「ホーホケキョ となりの山田くん」で動画、「千と千尋の神隠し」「崖の上のポニョ」などで原画、「ゲド戦記」で作画監督補。2010年公開の「借りぐらしのアリエッティ」で初監督し、観客動員765万人、興行収入92億5000万円を記録。2作目の「思い出のマーニー」は米アカデミー賞長編アニメーション部門にノミネートされた。

 

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