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北陸文化

オペラ「トスカ」 コラボの意気込み

オペラ初演出になる「トスカ」について語る河瀬直美監督(右)と指揮の広上淳一さん=東京都内で

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河瀬直美さん 知らないからこその冒険

広上淳一さん 互いが幸せになる融合を

 金沢市など全国五都市の劇場などが今秋に共同制作するプッチーニのオペラ「トスカ」の演出に、カンヌ国際映画祭でグランプリも獲得した河瀬直美監督が挑む。カトリック信仰を背景にした悲劇を、どうより普遍化した物語にするのか。指揮を担当する広上淳一さんとともに、初のオペラの演出への意気込みを語った。(松岡等)

 「オペラは鑑賞の経験もなかった」という河瀬さんが演出を引き受けたのは、「悲劇をどう希望ある物語に変えていくかということを求められ、いろんな意味で絶望感を味わうことが多い時代だからこそ、一生懸命やりたいと考えた」から。トスカは敬虔(けいけん)なカトリック教徒で、プッチーニの音楽もそれを背景にする。「ものを知らない人間が何でもできるように、自由さを選んだ。決まり事があったとしても、知らないからこその冒険をさせていただいているような気がして、そこに挑んだ」。舞台を一八〇〇年ごろのローマから古代日本を思わせる村に移して大胆に翻案した。

 宗教については「人間には何かに自分をゆだねたいという気持がある。日本では自然信仰に代表されるように、目に見えない神のような存在を感じて生きてきた。そうしたものと共存しながら、生も死も受け入れ、何かつながり合っていたという気がし、そっち側にシフトした」と語る。

 舞台美術は新進気鋭の建築家・重松象平さんが担当。河瀬さんの映像も駆使した舞台も楽しみ。「映画というスクリーンの平面の世界から、空間のある世界、映像と融合できる世界をつくっていきたいと思っている。装置は今のところできるだけシンプルに、光と影をつくっていきたいなと思っている」と明かす。

 名アリアが多い人気のオペラだが「誰が見ても聞いても素晴らしい映像、曲はある。けれどその後の静寂だったり、間だったりに、私たちは心を持って行かれる瞬間があるのではないかと思う」という河瀬監督。トス香(トスカ)が須賀ルピオ(スカルピア)を殺める場面をどう描くかで作品が変わるといい、「愛のために殺すのでは単純。そうしてしまったことを受け入れた瞬間のトスカの強さ、生き物が息絶える瞬間の悲しみをどう受け止めるのか」。演出の見どころになりそうだ。

 最大の関心事は音楽と映像をどう融合させるかだが、河瀬さんは「やってみないと分からない」と苦笑。一方、河瀬さんが拠点にする奈良を今月、訪れたという広上さんは、「分野が違う人同士が仕事をする時に大事にしたいのは、相手の分野のことを嫌いになってもらいたくないということ。それが仕事を引き受けたときの思いで、どのように融合すれば互いが幸せになるか」と。

 さらに「悲劇をそうじゃないものにするというコンセプトがあるとするなら、それをプッチーニの原典でどこまで応援することができるか、どういう形で彼女の演出意図が伝わるようにするか。そこで共同作業の可能性を示せればこの企画は成功。違う分野の人たちが互いに応援し合うようなメンタルをつくることができれば」という。

 「映画の世界で活躍する一人の才能とコラボして、いい意味での実験をさせてもらえると思って引き受けた」とも語った広上さん。河瀬さんも「河瀬をきっかけにオペラを見た人が、次もオペラを見てみたいと思ってもらえるようになれば、役割を果たせるのかなと思います」とコラボの意義を強調した。

     ◇

 公演は十月十五日のりゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館を皮切りに、同二十七、二十九日は東京芸術劇場。十一月八日は金沢歌劇座でオーケストラ・アンサンブル金沢を広上さんが指揮する。同月十二日の富山県魚津市の新川文化ホールは群馬交響楽団、大勝秀也さん指揮。十二月七日には沖縄県宜野湾市の沖縄コンベンションセンターで。

 

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