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北陸文化

【写真】ありのまま が面白い 「白い犬」「ナスカイ」梅佳代さん 新作に変化も

写真家として「意識はしてないけど、確実に変化していることは気付いている」と話す梅佳代さん=東京都内で

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 石川県能登町出身の写真家・梅佳代さん(36)が、昨年十二月に「白い犬」(新潮社)、今年三月には「ナスカイ」(亜紀書房)と、相次いで写真集を出版した。古里をテーマにした「のと」から四年近く。それぞれ犬と男子高校生を題材にした久しぶりの新作は、日常のちょっとしたドラマを絶妙に切り取る目はそのままに、写真家としての変化ものぞかせる。 (日下部弘太)

 「白い犬」は、写真の専門学校に進んだ十八歳の夏、帰省すると実家で飼われていたメス犬「りょう」が主人公。弟が野球部の寮で拾って帰り、それが名前の由来にもなった。梅さんはもともと動物が苦手。最初は枝でなでていたという。デビュー作「うめめ」をはじめ、既に多くの作品に登場。リードが頭の上に掛かった一枚など、とぼけぶりに人気もあった。

 今回も、戸の隙間から無表情に顔をのぞかせたり、その場でジャンプしてみたりと、笑いを誘う。一方で、夜の闇を背景に威嚇するようなシーンや、雪の中で存分に跳ね回る場面も。単なる「ペット」ではないことを映し出す。

「白い犬」(左)と「ナスカイ」

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 岩合光昭さん、宮崎学さんら、野生動物の写真家に憧れるという梅さん。「私のやり方で、『犬』というものを発表しようと思った」。タイトルもあえて一般名詞にした。

 物語性を秘めたカットも多く、何度もページをめくらせる。夕暮れ、外で遠くを見つめている情景から数枚置いて、梅さんの祖母の葬儀後、仏間を横切るりょうが出てくる。遠くを見ていたのは、実は祖母が亡くなった日だった。

 二〇一五年の秋、りょうは突然いなくなり、戻ってこなかった。もう撮れなくなったことに背中を押され、写真集にまとめた。

 「ナスカイ」も、対象がなくなるのを機に出版した。舞台は同じ三月に閉校した全寮制の私立男子校、那須高原海城中学・高校。東日本大震災で栃木県から東京の多摩地域に移って授業を続けたものの、栃木での再開を断念した。

 梅さんは一〇年、那須高原で催された芸術祭の取材を通じ、同校と縁ができた。かねて「中高生の男子に注目していた」。しかも寮住まいで六年間、朝から晩まで一緒なのも興味を引いた。チャンスを逃さず、多摩に移った後に通わせてもらうようになった。

 男子らしい変なポーズや夢見るまなざしだけでなく、すました表情の写真が目立つ。「自意識過剰すぎるところが見てて楽しい。距離感が好き」。同じ子が中学と高校で全く別の顔を見せることも。「めっちゃ男になる。あらー、って」

 二冊に共通するのは、「瞬間」の面白さに交じり、犬や中高生のありのままをとらえたカットが多いこと。梅さんの作品の代名詞とも言える「テンション高いやつとか、ぱっと見のズキュン」という写真から、作品の幅は確実に広がっている。

 「大人になると、『何ごとも何でもあり』みたいになってくる。一回どこまでもありにしてみて、結局どうなるか」。それが変化に「挑む」感じではないのも梅さんらしい。変化を「別に怖がらなくてもいい。面白いし、楽しみにしてます」。

 うめ・かよ 1981年、石川県柳田村(現能登町)生まれ。「男子」「女子中学生」シリーズで、キヤノン写真新世紀連続受賞。2006年、初写真集『うめめ』で「写真界の芥川賞」とも称される木村伊兵衛写真賞受賞。常にカメラを持ち歩き、日常生活の中の「決定的瞬間」を切り取る。梅佳代は本名。

 

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