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北陸文化

【寄稿】和紅茶の底力信じる 赤須治郎

茶摘みをする筆者。和紅茶は全国に広がっている((C)MasaNomura)

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「やさしい味わい」地域づくりの輪

 和紅茶をご存じですか。国産紅茶と呼ぶ代わりに趣のある呼び名をつけたものです。このネーミングにより、和紅茶は和菓子にマッチするなどの良いイメージが伝わり、雑誌で特集され、東京や大阪のデパートで試飲販売の催事が開かれるなど、和紅茶ブームが起きています。

 紅茶は西洋から来た「舶来品」と思われがちですが、実は明治初期から国内で作られ、それどころか、生糸と並ぶ主要な輸出品として外貨を稼ぎ、日本の近代化に大いに貢献した歴史を持っています。

 こうした輝かしい歴史を持ちながら、国産紅茶の印象が薄いのは、ひとつは第二次世界大戦で多くの茶畑が水田に切り替えられてしまったこと、もうひとつは高度経済成長時に輸入自由化がなされ、安価な紅茶が輸入されるようになったことによります。一九七一年に紅茶の輸入制限が撤廃され、産業としての国産紅茶は終焉(しゅうえん)しています。

 それが二十一世紀になって復活してきたのは、国産紅茶を守り続けた篤農家や研究者の活動があり、また、日本茶離れに危機感を抱く意欲的な茶農家(緑茶の生産者)が紅茶生産を始めたからでもあります。

 静岡や鹿児島などの大産地で作られる和紅茶に対して、加賀の紅茶(石川)やあさひの紅茶(富山)のように、小規模ながら地域で伝承されてきた茶畑の復興、再生策として作られた和紅茶もあります。私が主に携わっているのは、後者の地域づくりの紅茶であり、これを地紅茶と呼んでいます。

 私は紅茶仲間と十五年前から全国各地の紅茶生産者が集まって情報交換する「全国地紅茶サミット」を開いています。最初は知り合いの生産者だけの小さな集まりでしたが、二〇一四年の金沢サミットや昨年の奈良サミットでは三千人も集客する大イベントになりました。私たちの生産地調査でも十年前は八十カ所であったものが、昨年は四十五都府県六百二十九カ所にまで増えています。サミットを始めた頃には思いも寄らなかったことです。

 和紅茶の一番の特徴は「砂糖なしでも飲めるやさしい味わい」にあります。紅茶の渋みが苦手という人たちから支持され、無糖のヘルシーな飲み物、生産者の顔が見える安心感などから広く飲まれるようになりました。

 とはいえ、紅茶輸入量一万五千トンに対して国産紅茶生産量は百二十トンに過ぎません。和紅茶は小さな挑戦ですが、日本の紅茶を経済、社会、文化の面から変える底力を持っていると信じています。なぜなら、生産者が自発的に始めた活動であるからです。

 赤須治郎(あかす・じろう)金沢市在住、66歳。コピーライター、地域づくりコーディネーター。地域の特産品開発を目的に2012年から紅茶づくりを研究。06年から四万十紅茶(高知県)、08年から加賀の紅茶の商品化とブランディングを指導している。

 

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