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北陸文化

【能楽おもしろ鑑賞法】7 能「高野物狂」 漂う山の霊気、武士の意地

能「高野物狂」。空海ゆかりの松(左の作り物)の下で舞う高師(シテ藪俊彦さん)=2005年5月1日、石川県立能楽堂で(金沢能楽会提供)

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 能には狂女物というジャンルがある。人買いに子を奪われた母親が、狂乱の舞を見せて諸国を巡る物語。無事再会する話、子の墓に行き会い悲嘆にくれる話とさまざまだが、ドラマチックな展開で人気がある。

 主人公が男性の曲もある。金沢能楽会の七月定例能で上演される「高野物狂」は代表的な作品。しかし、趣はだいぶ違う。鑑賞のポイントは芸尽くしの舞より、情景を描く謡にある。

 主人・平松殿を亡くした常陸国の武士・高師(たかし)四郎(シテ)が登場。略式のけさを着け、寺で主人の冥福を祈っている。そこへ家来(狂言)が着て、平松殿の嫡男春満(子方)が出奔したと告げる。置き手紙を読む高師。淡々とした謡に「一子出家すれば七世の父母成仏す」「三年(みとせ)がうちには必ず必ず身の行方をも知らせ申さん」という春満少年の心情を感じ取りたい。

 主人から子の行く末を託されていた高師。「などや伴い給わぬぞ」と悔しがり、放下(ほうか)(歌を謡い放埒(ほうらつ)したる物狂い)になって探す決意をする。以前見たシテは目力で高師の並々ならぬ思いを表現していた。名人の技である。

 場面は高野山に。高師は笹を手に狂い登り、住僧(ワキ)と問答する。ここでも謡に集中を。「念仏称名の声々あるいは鳬鐘鈴(ふしょうれい)の声耳にそみ」「深々たる奥の院。深山鴉(みやまがらす)の声さびて」と霊山の情景が展開する。高師は、住僧の弟子となった春満と再会し、出家して“主従の道”を全うするが、山の霊気、武士の意地を感じたい能である。 (笛)

 ◇

◇七月定例能番組(7月2日後1時、石川県立能楽堂)

▽能「高野物狂」(シテ広島克栄)

▽連吟「大江山」(長野裕ほか)

▽狂言「文荷(ふみにない)」(シテ炭哲男)

▽能「黒塚」(シテ松田若子)

▽入場料=一般2500円(当日3000円)学生1000円、中学生以下無料 (問)同能楽堂=電076(264)2598

 

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