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北陸文化

【コミュニティシネマ 街中銀幕から】 現実と創作の境目を超える

(C)「海辺のリア」製作委員会

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 六月三日から上映する『海辺のリア』。仲代達矢さんを主演に、石川県内で撮影された作品だ。

 映画は、一人の老人がパジャマにコートを羽織ったまま海辺をさまよう姿から始まる。老人はかつては知らないもののいない映画スターだったが、認知症の疑いから家族から見放され老人ホームへと送り込まれたのだ。

 ホームから脱走し、海辺へとたどり着いた彼は、別れた娘と運命の再会をする。彼を老人ホームへと追いやった娘夫婦の思惑も重なり、朦朧(もうろう)とした老人に家族は振り回されていく。

 シェークスピアのリア王をモチーフに、純粋さと打算の中で揺れる家族の関係を、仲代さんをはじめ黒木華、原田美枝子、小林薫、阿部寛といった豪華俳優が演じる。

 本作品の最大の見どころは仲代さんだ。彼が演じるかつてのスターである老俳優は、半世紀以上のキャリアを持ち、近年は若手の育成にも心血を注いできた。観客は劇中の彼の姿を現実の彼の姿と重ねずにはいられない。

 また、本作品は多くの場面が石川県で撮影され、主な舞台となるのは千里浜の海岸だ。現実の仲代さんも能登演劇堂での活動など、石川県ともゆかりが深い。役者への道を志すきっかけとなった思い出を語る老俳優の独白は、果たして仲代さんの本当の思い出なのか。

 千里浜の海岸で一人で演じ続ける仲代さんを見ているうちに、ドラマの役と現実の姿が重なり、固定カメラで映し出される千里浜の海岸は劇場となる。映画と舞台と演じることに人生をかけてきた一人の俳優が、迎えつつある晩年の自分に、言葉ではなく演技で向かい合う。現実と創作の境目は曖昧になっていき、人生を演じることにかけてきたその姿は、フィクションを超える。(シネモンド支配人・上野克)

 

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