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北陸文化

【本】自伝小説「家出ファミリー」 田村真菜さん著 困難生き抜く少女から力

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 生きづらさを抱える人たちにとって、人生を伴走してくれるような一冊だ。貧困と虐待が影を落とす家庭に育った少女が、困難に遭いながら生き抜く姿を描いた自伝的小説「家出ファミリー」(晶文社)。起業家支援のNPO法人勤務などを経て今作で作家デビューした田村真菜さん(28)=写真=は「こういうふうに生き延びた大人がいると知ってもらえたら」と話す。

 小学校に通わず、犬やモモンガの世話をしながら暮らす十歳のサナ。両親は機嫌が悪くなると殴ってくる。父親は定職に就かず、家計を支える母親は追い込まれ、娘二人を連れて「日本一周」を計画する。行き先も、終わりも分からない旅。三人は神奈川県の自宅を出発し、九州や東北などを巡り、北陸へ。

 大人の暴力に幼い子は非力だ。サナは抗(あらが)う。旅先の駅で母親に置き去りにされた時も、野宿して生きる術を学んだ。非凡さに驚く半面、無邪気な子どもではいられなかった悲しさを思う。困窮した生活の中で、母親も苦しみ、もがいている。食費にも困る暮らし、思い描いた家庭を築けなかった絶望感、疲労の蓄積…。そんな境遇に陥ったらどうなるか。人ごとではないと思わされる。

 「虐待する側にも背景がある。誰も悪者にしたくなかった」と田村さん。自らも十二歳まで義務教育を受けず、親手作りの教材などで勉強。虐待に関するトリイ・ヘイデンの著書や柳美里さんの私小説を図書館で読み「他にもこういう育ちの人がいたんだ」と知った。だから自身の本も多くの人に届けたいと願う。

 小説で社会人となったサナはつぶやく。「生きることを選ぶ価値があると思いたいの」。境遇は選べなくとも人生は切り開ける。闘い続けるサナに、背中を押される。二百九十六ページ、千六百円(税別)。 (押川恵理子)

 

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