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北陸文化

新しい世代応援したい 金沢21世紀美術館新館長 島敦彦さんに聞く

抱負を語る金沢21世紀美術館の島敦彦館長=金沢市広坂で

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 金沢21世紀美術館の新館長に島敦彦さん(60)が就任した。開館から十三年を経過し、昨年度は新幹線効果も手伝い入場者数が二百五十万人を突破。観光客が増える一方で地元市民にリピーターが少ないという指摘もある。国立国際美術館(大阪市)などで日本の現代美術を中心に多くの展覧会にかかわってきた島さんに抱負などを聞いた。 (聞き手・松岡等)

 −初代の簔豊さん、二代目の秋元雄史さんと個性的な館長の後を継ぐ。

 簔さんがロケット、秋元さんが第二のエンジンで軌道に乗せてくれた。その軌道に乗っていくことになるが、これからの十年が大事だとも思っている。

 郷里が富山で、国立国際美術館の巡回展や作品の貸し借りもあり、年に数回訪れてきた。妹島和世+西沢立衛/SANAAによる建物の効果が大きく、客を呼び込む装置になった。だからこそ集客の難しい若い作家の展示もできる。

 同じ時代を生きている人間として取り上げないわけにはいかない作家の紹介を一番率先してやってきた美術館。日本のアーティストを海外に発信し、海外で注目されるアーティストをいち早くここで知らせるという役割も果たしてきた。

 −土日はたいへんな混雑になる。

 にぎわいの創出が目的の一つだったが、ほぼ達成してきたと思う。公立美術館は開館から十年くらいたつと予算も削減されて学芸員もマンネリ化して発信力が落ちてくることがあるが、そこは維持している。

 ただ地元の市民に一、二回来ただけでリピーターになっていない人も多いとも聞く。観光の人が多くてチケットを買うのも大変ということがあるようなので工夫したい。地元の人たちに向けたちょっとしたレクチャーやメディアで継続的に発信することもあっていいと思っている。

 −館長としての役割をどう考えているか。

 自分が前面に出るというより、学芸員をバックアップしていきたい。例えば、ちょうど一九八〇年代以降の日本の現代美術をやってみたいという学芸員がいる。21美は八〇年代以降の作品収集を方針にし、私が美術館活動を始めたのも八〇年から。ずいぶん資料も持っている。裏方としてぜひ応援したい。

 新しい世代の学芸員がどう再構築するか期待している。日本の現代美術の出発点になった八〇年代をもう一度見直し、続く九〇年代、ゼロ年代の美術の動向をとらえ直すことを一緒に考えてみたい。

 −金沢は工芸が盛んな街だが。

 伝統的なものを守りその延長で仕事をしている方がいる一方、伝統をどう打破していくかを考えている人もいる。収蔵品として若い人の作品もずいぶん入っているが、一般的な工芸館で見せるのと21美で見せるのとでは場の空気感も違い、作家からすればどこまで力を発揮できるのか試す場にもなる。

 現場の学芸員がそういうことをやってみたいということはありうる。秋元さんが「工芸未来派」など何度か花火を打ち上げたので、地道に調査してカバーできるのではないか。

 −学芸員として多くの展覧会を企画してきたが、やってみたいことは。

 今、興味を持っているのは彫刻。近年、現代美術の作家たちの中で彫刻のあり方、考え方が変化し、アプローチの仕方も拡張しているのではないかという予感がある。

 金属で精巧に動物を模写する自在置物のような工芸に近いものがある一方、空間を意識したインスタレーションや参加型の作品もあり、非常に拡散している。それらを彫刻というジャンルで言い表せるのではというアイデアがある。可能性があればやってみたい。

しま・あつひこ 1956年富山市生まれ。早稲田大理工学部金属工学科卒。80年4月から富山県立近代美術館建設準備室を経て同館学芸員。92年1月に国立国際美術館(大阪)に移り学芸課長、副館長など。2015年4月から愛知県美術館長を務めた。国際交流基金国際展事業委員、文化庁芸術選奨選考委員。主な展覧会に「滝口修造とその周辺」(98年)「畠山直哉」(2002年)「絵画の庭−ゼロ年代日本の地平から」(10年)「あなたの肖像−工藤哲巳回顧展」(13〜14年)など。

 

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