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北陸文化

【能楽おもしろ鑑賞法】5 能「藤」 ご当地満載優美の舞も

能「藤」の後シテ。藤の花を飾った冠を着け、華やかな装束、扇で舞う=2012年6月3日、石川県立能楽堂で(金沢能楽会提供)

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 金沢能楽会の五月定例能で上演される能「藤」。舞台は現在の富山県氷見市で、大伴家持らの歌に詠まれた藤の精が優美な舞を見せる。北陸にとってはご当地能。織り込まれた和歌の面白さも鑑賞しよう。

 登場した旅僧(ワキ)は既に加賀の篠原、安宅を見てきたと言う。善光寺へ向かうため高松、石動山を過ぎ、氷見の里に到着する。ご当地満載だ。湖のほとりに咲く満開の藤を見て口ずさんだ和歌「常磐(ときわ)なる松の名立てにあやなくもかかれる藤の咲きて散るやと」。紀貫之作で和漢朗詠集にも掲載された歌だが、里の女(前シテ)に「藤の名所で松の名立て(引き立て役)とは何事か」とたしなめられる。

 受けて地謡が朗唱する「多●(たご)の浦の底さえ匂う藤波をかざして行かん見ぬ人のため」は家持の部下縄丸の作。これも朗詠集に収められている。後に登場する浦の住人(間(あい)狂言)は、家持作も交え湖畔での和歌の宴を誇らしげに語る。能の本文で取り上げられたのが万葉を代表する家持の作でなく、朗詠集の藤の項に記載された二首であることが興味深い。

 自らを花人(はなひと)と名乗って消えた里女は、花の菩薩(後シテ)として再登場。藤で飾った冠を着け(松にかかる藤を舞台に出すときは花を付けない)、夜もすがら歌舞をなす。日舞のように体をひねって女らしさを強調することはない。妄執から脱することを願う他の能の女とも違い、ひたすら美しい世界を描く。華やかな装束、扇、面も楽しみたい。 (笛)

◇五月定例能番組(5月7日後1時、石川県立能楽堂)

 ▽能「藤」(シテ佐野弘宜)▽狂言「瓜盗人」(シテ中尾史生)▽仕舞「加茂」(シテ渡辺茂人)▽能「来殿」(シテ松本博)

 ▽入場料=一般2500円(当日3000円)学生1000円、中学生以下無料(問)同能楽堂=電076(264)2598

●は示へんに古

 

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