トップ > 北陸中日新聞から > 北陸文化 > 記事一覧 > 4月の記事一覧 > 記事

ここから本文

北陸文化

【映画】教育効果 もっと公に 横浜 土肥悦子さんらシンポ

「こども映画教室」のこれから

自らつくった脚本で映画を撮影する子どもたち=3月19日、金沢21世紀美術館で

写真

 金沢市で二〇〇四年に始まった「こども映画教室」の活動が全国に広がっている。東京に拠点を移した後、一三年に任意団体「こども映画教室」を設立。首都圏のほか、青森県から広島県まで各地で開催され、映画祭やフィルムコミッションとの協働、学校教育の現場での試みなど開催の場も多様化している。三月十二日に横浜市で開かれたシンポジウムでは公的な教育で取り入れる可能性を議論。シンポや今年の金沢での教室での現場から今後の展望や課題を探った。 (松岡等)

金沢から全国へ

 こども映画教室は小学生を対象に、動画の原理を理解するための工作▽世界の秀作を見て意見を交わす鑑賞▽一線で活躍する映画監督を講師にした映画制作−のワークショップがある。金沢のミニシアター「シネモンド」代表でもある土肥悦子さんがスタートさせた。

 金沢では金沢21世紀美術館(金沢芸術創造財団)との共催で毎年開催。映画制作の特別講師にはこれまで、中江裕司、是枝裕和、萩生田宏治、河瀬直美といったそうそうたる監督らが参加した。一四年以降は東京、神奈川、青森、福島、広島、埼玉、群馬、長野の各地でも開催し、当初からの参加者は延べ二千人を超える。

 映画制作のワークショップは三日間で脚本づくりから撮影、編集、上映までを子どもたち自身が行う。子どもたちは、互いにアイデアを出し合い、自分たちの作った物語を映像化するために撮影や編集で工夫を重ねる。出来上がった作品は完成度の優劣を超えた映画の原初的な発見に満ち、見た大人たちの多くが「ここまでできるのか」と口をそろえるほどだ。

映画教育について語り合うパネリストら=横浜市の東京芸術大横浜校地馬車道校舎で

写真

小学校での実践

 初めて出会った子どもたちが議論しながら作品を撮り上げる過程は、自ら主体的に課題を発見して仲間と協力して解決していく「アクティブラーニング」(能動的な学修)そのもの。映画普及を超えて教育的なメリットは大きく、公的な教育での位置付けを模索する。

 シンポでは昨年、横浜市新田小学校で行われた映画制作について、担当した教諭が実践報告。初めて顔を合わす子ども同士ではなく、既に知っている仲間で作るという違いを指摘し、「『仲間が見てくれてうれしい』という子がいた」「失敗してもめげず、『自分たちならできる』という思いが持てたのでは」など、教育的な効果を強調した。

 「M/OTHER」などで知られる諏訪敦彦監督は、映画教室についての最大のメリットに「代替不可能性」を挙げる。「なぜ映画か? と問われれば、参加した子がかけがえのない、取り換えがきかない存在であるという自己肯定感を得られることではないか。映っていることは、取り換えのない唯一のことであるというカメラの力が映画にはある」と話した。

大人の心も刺激

 ボランティアを含めたスタッフや映画関係者ら自身への影響も大きい。三月十八日から三日間、金沢であった教室の特別講師は「知らない、ふたり」などの今泉力哉監督。普段から演技のワークショップなども実践するが、「自分たちができるのは環境をつくることだけだが、子どもたちが思わぬ力を発揮する」といい、「発見が多く、これまで撮っていなかった子どもの映画も作りたくなった」と話した。

 金沢工業大で映像を学びながら、自主映画を撮っている楠彩さん(20)は、小学六年生だった〇七年に参加。今年はスタッフとして初めて子どもたちのサポートについた。「教室がなければ今の自分はない。映画を撮る中で学ぶことは多く、本当のプロにも出会える」と、映画にかかわる自らの将来を思い描いた。

 ただ課題は少なくない。開催地ごとにさまざまな分野の補助金などを駆使して行われ、資金は慢性的な問題。NPO化して常勤のスタッフを置くべきだという声もある。公教育に組み込むことを目指す代表の土肥さんは、講師となる映画のプロと教育のプロが協働する必要性なども挙げている。

 

この記事を印刷する

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索