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北陸文化

【本】崖っぷち社会 問う 小倉利丸さん「絶望のユートピア」

小倉利丸さんによる「絶望のユートピア」

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 資本主義批判を根底にしながら社会のさまざまな問題に鋭く切り込む批評活動を展開する富山大名誉教授で批評家の小倉利丸さん(現代資本主義論、監視社会論)が、一九八〇年代以降、昨年までに雑誌や自らのブログなどに執筆して著書に未収録だったテキストを「絶望のユートピア」(桂書房)としてまとめた。

 まず、その物理的な分量に圧倒される。計千二百五十ページ、本の厚さは六・五センチにもなる。収録したのは六十一本の文章。内容も憲法、天皇制、ナショナリズム、フェミニズム、原発問題、美術を中心にした表現の自由の問題…と多岐にわたる。

 時系列でもテーマごとにでもなく、一見アトランダムに並べられたようにも見えるが、小倉さんはまえがきで本人にも自覚できない「ある種の無意識のアルゴリズムというしかない方法で」と説明する。しかし「資本主義に対する根底的な懐疑と批判の意図を通奏低音」で一貫している。

 社会運動家でもある小倉さんは常に問題のありかに敏感だ。膨大な文章群からは、小倉さんが、経済のグローバル化が進む中で、資本主義や国家のひずみが日本社会の地表にもたらしたひび割れからのぞく現象をいち早く察知し、その都度、問題を指摘してきたのだと分かる。しかも書かれている多くの事がらのほとんどが今もなお問われ続けており、その問いは切実さを増している。

 タイトルの「絶望」とは文字通り、この社会は崖っぷちなのだという認識からきている。しかし「絶望のユートピア」は一般に言われるような望まれない「ディストピア」の意味ではないという。もしこの社会のありように疑問を持ったならば、関心のありそうなテクストから読み始めればよいのかもしれない。絶望という場所を突き抜けた先にあるユートピアを考えるために。五千円(税別)。 (松岡等)

 

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