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北陸文化

【コミュニティシネマ 街中銀幕から】 そして映画はつづく 

 『この世界の片隅に』が大変な話題となり、いつも上映期間が短いシネモンドでも八週間のロングラン上映を行った。シネモンドでの上映は終了したが、その後は県内のシネコンでの上映が引き継がれた。『この世界の片隅に』も、『となりのトトロ』や『火垂るの墓』のように、何十年たっても見続けられていく名作だ。

 今年に入ってから、過去作品をたくさん上映している。正月の角川映画祭、名匠ルキノ・ビスコンティ監督特集、アルジェリアの独立戦争を描いた二十世紀の戦争映画の傑作『アルジェの戦い』、そして十八日からは、黒沢明監督もその初の作品に感嘆したというイランの巨匠アッバス・キアロスタミ監督を追悼した特集上映を行う。他にもイングリッド・バーグマンの信念を貫いた生涯を描いたドキュメンタリー『イングリッド・バーグマン 愛に生きた女優』や、映画を監督が自ら読み解くという楽しさに満ちた名著を映画化したような『ヒッチコック/トリュフォー』も上映している。

 映画館では毎週土曜日には新作が次々に公開となり、止まることなくさまざまな映画を上映していく。月日は流れ、新しかった映画が過去のものになっていくことに立ち会っていく。その中で記録や記憶に残り続ける作品がある。それは極私的なものかもしれない。

 二月十八日から『いのちのかたち』という映画の上映が始まる。絵本作家のいせひでこさんに寄り添った絵本のようなドキュメンタリーだ。いせさんは東北大震災の被災地である無人の荒野で、打ち倒された一本のクロマツと出会い対話を重ねていく姿が描かれている。

 伊勢真一監督が『いのちのかたち』の取材でこんなことを話していた。「立ち止まる映画だね。効率化を目指す世の中で立ち止まってみる。目の前のことも自分のことも考える。そのことで自分自身が傷つくことがあるかもしれない。けれど、立ち止まらないと気がつかないこともあるんだ」

 次々に新作が作られ、時間は過ぎていく。けれど映画はスクリーンの中で時間が固定されていて、その時代へと観客を誘う。そして過去の作品でも現在、そして未来へと目を向けさせてくれる作品もある。『アルジェの戦い』は五十年も前の映画だが、観客を現在の世界中で起きているテロと向き合わせた。バーグマンの立ち居振る舞いに、生き方に、心を動かされる。

 そして人生はつづく、映画もつづく。三月はこども映画教室で小学生に映画製作を体験してもらう。新しい世代のまだ見ぬ傑作は常に芽吹いている。(シネモンド支配人、上野克)

 

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