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北陸文化

【映画】3・11で倒れたクロマツに 呼び止められたひでこさん

「いのちのかたち」の一場面

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伊勢真一監督「いのちのかたち」18日からシネモンド

 東日本大震災後、宮城県亘理町の吉田浜に横たわるクロマツの倒木を描き、被災地との交流を続ける画家、絵本作家いせひでこさんを三年にわたり追った伊勢真一監督(68)のドキュメンタリー映画「いのちのかたち」が十八日から金沢市のシネモンドで上映される。倒木に命の尊厳を見るいせさんの言葉が胸に響く。

 いせさんは一九四九年北海道生まれ。スケッチの旅をしながら現場主義に徹した作品で知られ、「リユールおじさん」(講談社)で講談社出版文化賞絵本賞など多数の絵本を描いてきた。二〇一一年には「木のあかちゃんズ」(平凡社)を緊急出版。福島県飯舘村の小学生たちにそのイラストを送る活動を続けている。

 クロマツの元に通い続け、心を通わせるように描くいせさん。映画の中で「かたちは枯れているけれど、何か精神みたいなものは生きてる。だから、今回ずっと亘理町のこの木を描きながら、“私は木の尊厳を描いているんだな”みたいな気持ちになってきて」とつぶやく。

「3・11からの旅はまだ続いている」と語る伊勢真一監督=金沢市内で

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 震災後に出版した「最初の質問」(詩・長田弘)、「わたしの木、こころの木」(絵・文いせひでこ)などの朗読も交え、チェロも弾くいせさんが参加した一五年の「1000人のチェロ・コンサート」(仙台市)の模様も丹念に映し出していく。

 伊勢監督といせさんの出会いは小児がんの子どもたちを十年にわたり見続けた映画「風のかたち」(〇九年)のために通った病院に飾られたいせさんの絵がきっかけ。「絵本の作り方やものの見方が自分と似ているなと思った」。一二年、「クロマツから呼び止められた」といういせさんの電話に、伊勢監督は「これは来て撮れってことなんだろうなと思った」と振り返る。

 映画を見た人から「絵本のようなドキュメンタリー」という感想が寄せられた。ハイスピードで撮影した星の動きやクロマツに降り積もる雪のスローモーション映像が美しい。「編集で雪が降るシーンを見ていた時、時間が自分の中で変わっていたのが分かった。ゆっくり流れる時間は記憶として残っていく。3・11からまだ六年弱。時間を五十年、百年と引いて見た時に、自分たちはまだ震災の直後を生きているだけなのにもう昔のことというふうに思ってしまっている。自分の時間を持っていないと全体の時間にだーっと流されてしまう」

 「『いのちのかたちって何ですか?』と聞かれるんだけど…。見た人が自分のいる場所からそのことを考えることができるというのは、とてもぜいたくなことだと思うんだよね」と語る伊勢監督。「クロマツに呼び止められたひでこさんに僕が呼び止められ、映画が見る人を呼び止める。そうやって時間ができていくのかもしれない」。映画「傍(かたわら)〜3月11日からの旅〜」(一二年)では亘理町と飯舘村の被災地を記録。その旅はまだ終わっていない。

 十九日の上映後、伊勢監督のトークがある。 (松岡等)

 

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