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北陸文化

金沢移転に期待と懸念 国立近代美術館工芸館めぐり意見交換

東京国立近代美術館工芸館の移転後の役割について意見を交わすパネリスト=金沢市の石川県立美術館で

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馬渕明子氏 情報発信機能を新たに

唐沢昌宏氏 基本構想に時間かけて

嶋崎丞氏 全面受け入れに積極的

川本敦久氏 ものづくり気風生かせ

 政府機関の地方移転の一環として東京五輪・パラリンピックが開かれる二〇二〇年をめどに金沢市への移転を目指す東京国立近代美術館工芸館について、関係者が意見を交わすシンポジウムが八日、同市の石川県立美術館で開かれた。内外への情報発信の必要性を強調した馬渕明子国立美術館理事長らに対し、嶋崎丞県立美術館長や川本敦久金沢卯辰山工芸工房館長は「全面移転」を要望。国と地元とで考えの違いが浮き彫りになった。 (松岡等)

 移転については、国が公表した基本的な考え方で、(1)移転先は「兼六園周辺文化の森」の県立美術館といしかわ赤レンガミュージアムの間の敷地(2)県、市が協力し現工芸館と同規模の施設を整備(3)外観は旧陸軍第九師団司令部庁舎と金沢偕行社を活用(4)現所蔵品から美術工芸品を中心に半数以上を移転(5)運営は県、市などの協力を得つつ国立美術館が行う−となっている。

 県は建物の基本設計をまとめる作業を進め、新年度には実施設計に入る。しかし具体的にどんな施設になるのか、管理運営の方法、名称などの具体的な議論はこれからだ。

 シンポでは受け入れる地元の立場の嶋崎氏が、馳浩前文部科学相の言を引いて「全面的に引っ越しし、国の役割を堂々と果たしてほしい」と求め、川本氏は加賀藩の御細工所の伝統から金沢のものづくりの気風や研修機関など地域性を生かすためにも「一部を持ってきても意味が無い」などと主張した。嶋崎氏は、金沢21世紀美術館を成功例として名称にも工夫が必要と指摘する。

 こうした地元のアピールに、馬渕氏は「移転するのだから覚悟を決めるしかない」とした上で、「新たな機能を持たせることが大前提」と強調。約三千七百点の収蔵品は「収蔵庫からあふれるほど」としてスペースの問題や運営費、人的資源などの課題を挙げて、「丸ごとは現実的に無理」と述べた。

 シンポでコーディネーターを務めた東京国立近代美術館の唐沢昌宏工芸課長は、21美を例に「通常なら数年かける基本構想がない」ことに懸念を表明。新たな館がどのような役割を持つのかが決まらない中では収蔵品も選びようもなく、二〇二〇年の移転には「ぎりぎりの状況」という。また、国立の館として「全国の目で見て中立性をしっかり持つことも重要」とも話した。

 馬渕氏は、現段階で考えられる移転後の館が備えるべき新たな機能として、工芸に関する情報を多言語でデータベース化し発信機能を充実させ海外の研究者へのサポートを行うことや、作家が参照すべき作品を紹介し、滞在制作などへの支援などを挙げる。

 また会場からの質問を含め、地元から全面的な移転を求める声が強いことに、馬渕氏はスペースや人的な問題も含めた「大きなプロジェクトになるなら全面移転の可能性はある」「東京にしがみつくものではない」などとする一方、「それにはたいへんなエネルギーが必要」とも述べ、地元への過大な期待にくぎをさした。

 

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