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北陸文化

【本】冬の朝市詩情豊か 「北陸朝市紀行」池田進一さん出版

写真

 北陸三県の朝市に息づく風土と露店の女性たちの暮らしや表情を、写真と聞き書きで記録した写真家池田進一さんの「北陸朝市紀行」(こぶし書房)が出版された。

 池田さんが訪ねたのは二〇一五年秋から一六年春にかけての輪島(石川県輪島市)、飯田(同県珠洲市)、福野(富山県南砺市)、越前大野(福井県大野市)の四つの市。ページを繰るごとに、まだ明け切らない薄暗い中、露店の女性たちと客たちが白い息を吐きながら土地の言葉で交わす会話がざわめきとなって聞こえてきそうな一冊だ。

 例えば福野で売られる野菜が新鮮でうまいのは「朝採り」だから。「朝採りはたいへんに大事思うや。私はいつもそういう心でおるがちゃ」

 輪島ではカニやサザエなどの海産物だけでなく、海女さんのこと輪島塗のこと、女性たち自身の人生についても語られる。八十七歳のはる子さんは三歳の時にしけで漁師だった父を失い、八十歳まで市に出て、百歳まで生きた母の跡を継いだ。「冬はまな板の上に雪がたまるんや」。輪島の気候を自らの人生に重ねるようにこぼれた言葉に、はっとする。

 「厳しい」とひと言では言えないほどの冬があるからこそ実感する食べもののありがたさ、豊かさ。その実感は、街のスーパーでは味わえない。写真の女性たちの笑顔や手に刻まれたしわ、方言そのままを写し取った言葉に、人のぬくもりと詩情があふれる。

 池田さんは一九六四年、福岡県大牟田市生まれ。フォトジャーナリスト樋口健二さんに師事し、食文化や風土をテーマに取材している。「東北朝市紀行」(同)の続刊。

 百七十二ページ。千八百円(税別)。

 

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