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北陸文化

【工芸】漆の質感 あきさせない 田中信行さん 富山で個展

漆の質感をテーマにした作品を作り続ける田中信行さん=富山市開のギャラリーNOWで

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 伝統工芸の技法を踏まえながら漆の質感を追求し続ける漆造形作家、金沢美大教授の田中信行さん(57)=金沢市=の個展が富山市開のギャラリーNOWで開かれている。「ImaginarySkin(イメージの皮膚)」と題したシリーズを中心に、近作九点を展示。なまめかしささえ感じさせる表面の滑らかさと漆にしかない底つやは見る人をあきさせない。二十一日まで(月曜休み)。

 床に置いた「イメージの皮膚III」(縦六十七センチ、横百四十三センチ)は鮮やかな赤の深みが官能的。ついたてのように立った黒の「イメージの皮膚I」(縦二百十二センチ、横百三十センチ)は面の透明感に吸い込まれるようでもあり、鏡のように外界を映し出すようでもある。

 発泡スチロールや粘土などの原形に麻布を張った造形によって生み出される不定型な曲面や凹凸が漆の質感の表現に欠かせない。「漆には、木や石と同様、自然素材が持つ深い魅力があり、それを引き出すことを考えている」と言い切る。

 東京都生まれ。東京芸術大では蒔絵(まきえ)などの伝統的な加飾も学んだが「『芸大を出てお椀を作るのか』という疑問に自ら答えを出せず、高校教諭をしながら一時は漆から離れた」。数年間を経て、再び湧いた自らの制作意欲を問い直してたどりついたのは、塗りと磨きという作業を含めた漆の表面の魅力だったという。

 二十九歳で初めて開いた個展以来、漆の良さを引き出すことに傾注。樹木の表皮や大地の凹凸のような自然と結び付く、有機的な造形も変わっていない。つやを生み出す光を制作や展示を通じて意識するという。

 東京国立近代美術館をはじめ内外の美術館にパブリックコレクション多数。伝統工芸の技法で作品は現代美術ともとれる独自の立ち位置で制作を重ねる。「やってみたいことはまだある」といい、漆の面で部屋全体を覆う空間をつくる試みなども頭に描いている。 (松岡等)

 

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