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北陸文化

【美術】地方の日本的価値 紹介 来年5月 第57回ベネチア・ビエンナーレ

「ベネチアでは東京など大都市ではなく、地方の視点から日本を見せたい」と語る鷲田めるろさん=金沢市の金沢21世紀美術館で

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 来年五月に開かれる第五十七回ベネチア・ビエンナーレ国際美術展の日本館展キュレーターに、金沢21世紀美術館キュレーターの鷲田めるろさんが選ばれた。作家は広島県に生まれ育ち、広島で地域にこだわってインスタレーション作品を発表している岩崎貴宏さん。鷲田さんは「地方から、とりわけ広島という土地から読み解いた日本的な価値を欧州に紹介したい」と意気込みを語る。

日本館キュレーターに鷲田めるろさん

岩崎貴宏さんの視点に共感

 岩崎さんは一九七五年生まれ。広島市立大芸術学研究科博士後期課程修了、英国エジンバラ・カレッジ・オブ・アート大学院修了。ヨコハマ・トリエンナーレ(二〇一一年)、二〇一三アジアン・アート・ビエンナーレ(国立台湾美術館)などに出品するほか、一五年はニューヨークのアジアソサエティ、黒部市美術館などで個展を開催した。

作品を制作する岩崎貴宏さん(撮影小山田邦哉)

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 自らも21美の準備段階から金沢に住み、地域や参加をテーマに現代美術、建築の展覧会を企画してきた鷲田さんは、指名コンペで岩崎さんの個展を提案した理由の一つに「自分も金沢でやってきて、広島、瀬戸内の地域を意識しながら作品を作っている岩崎さんの、大都市からは出てこない視点に共感するところがあった」と話す。

 岩崎さんの作品の特徴の一つは「見立て」だという。身の回りにあるタオルが雑然と投げ出されているように見える作品に、緻密な鉄塔や送電線を加えることで日本の地方の風景になる。鷲田さんは「それは福島の原発事故であらわになった地方と都市の関係を思い起こさせる」と指摘する。

 日本館の会場は、一階がピロティで、二階の床に穴が空いているという特殊な空間。展示の一つは二階の床を海抜ゼロメートルとし、階下から穴を通して床の上に作られた工場の立ち並ぶ瀬戸内沿岸部の街を海側から見る仕掛けになる。一方、二階からは山側から見ることになり、それは一地方の牧歌的な風景に見ることになるという。

展示スタディ模型(2016年(C)TakahiroIwasaki,CourtesyofARATANIURANO)

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 もう一つの特徴は「時間の意識」。厳島神社の模型が天井からつり下げられ、水面に反射する建物も精緻に作られるが、「水面に映る揺らぎのない一瞬を切り取ったような世界は、石で水を表現する枯れ山水のようでもある。一方で原爆による一瞬の前と後の世界が代わってしまうという岩崎さんの時間への意識からきている」。

 平安時代からたびたび台風などの災害に遭ってきた厳島神社は、床をあえて固定していないことで建物が大破しないようになっている。「外からの力を受け流すという日本的な対処の仕方。そうした価値観が、同じ海抜ゼロの水上都市ベネチアでどう見てもらえるか。祝祭的な場でもあり、楽しい展示にしたい」と話した。

 

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