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北陸文化

【コミュニティシネマ 街中銀幕から】 映画「葛城事件」と舞台あいさつ

 八日から上映が始まった『葛城事件』は、付属池田小事件や和歌山カレー事件、黒子のバスケ脅迫事件などいくつかの事件を参考に、無差別殺傷事件を起こした犯人の家族を描いた舞台を映画化、ブラックなユーモアで描いた傑作だ。

 赤堀雅秋監督は前作『その夜の侍』でひき逃げの被害者家族を描いたが、本作では加害者家族を描いた。悲惨な事件が起こると、多くの人が被害者へ思いをはせるだろう。一歩間違えると自分も被害者やその遺族になっていたかもしれないと。しかし、加害者へ思いを寄せる人々もいるのだ。『葛城事件』は、加害者とその周りの人々と、我々は地続きの存在なのだという現実を突きつけてくる。

 閑散とした金物屋を継ぎ、狭い世界で生きてきた独善的で威圧的な父親、家庭の中で身動きできずに無気力状態になってしまった母、かつては優等生だったが営業の仕事がうまくいかずに悩む長男、そして出来のいい兄と比較され、抑圧されて育ってきたニートの次男。父親を演じる三浦友和さんの矮小(わいしょう)な怪物っぷりをはじめ、出演者が皆良い。小さなディティールを積み重ねて丹念に描いていくことで、この家族の姿がどうも人ごとだと思えなくなっていく。

 上映の初日に赤堀監督の舞台あいさつを行うことになっていたのだが、舞台では次男を、映画では長男を演じている新井浩文さんが、急きょ金沢まで駆けつけてくださった。突然の知らせに、新井さんのファンの皆さんも劇場に詰め掛けてくれ、立ち見が出る大盛況となった。

 新井さんがシネモンドに来館したのは『赤目四十八瀧心中未遂』の上映以来十二年ぶり。赤堀監督とのトークには、軽妙洒脱(しゃだつ)な話しぶりと写真撮影もOKとファンにもしっかりと応えていた。

 赤堀監督も新井さんも今回は金沢へ自費でいらっしゃった。大切に育ててきた作品を盛り上がるために、一人でも多くの人に映画を見てもらうために、観客と直接向き合うために、できることは自らする。本当に作品を大切にしている人たち。

 自分の作品のため監督、脚本はもちろん、宣伝から映画館への営業、舞台あいさつで観客と交流すること。一人でも多くの人に映画館で鑑賞してもらうことが、次の作品への一番の力になると語っていた故若松孝二監督のことを思い出した。映画館は観客の皆さんへ届けるために作品を預かっているのだということを改めて感じた。 (上野克=シネモンド支配人)

 

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